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エージェンティックAI(Agentic AI)とマルチエージェントAI(Multi-Agent AI)の基礎:仕組み・活用・設計ポイント

  • 著者 : 小薗井 康志@Kyndryl
  • 25.09.26

AI技術の進化は目覚ましく

AI技術の進化は目覚ましく、さまざまなタイプのAIが登場しています。なかでも、特に注目を集めているのが「エージェント型AI(以下、エージェンティックAI)」と「マルチエージェントAI」です。従来のAIをさらに進化させたものであり、自律的な業務遂行や、より柔軟で高度な意思決定を可能にします。とりわけ、複数のAIエージェントが協調して機能するマルチエージェントAIシステムは、今後の企業活動において飛躍的なパフォーマンス向上をもたらす次世代のソリューションとして期待されています。

本稿は、エージェンティックAIとマルチエージェントAIの基本概念と違い、導入設計の要点を実例で解説します。


エージェンティックAI(Agentic AI)とは

エージェンティックAIとは、目標達成のために自律的に判断し、環境と相互作用しながら行動するAIです。ユーザーの指示や状況に応じて最適な行動を選び、連続的なタスク処理や複雑な意思決定が可能です。

現在広く使われている生成AIは、基本的にユーザーからの指示に受動的に応答するものです。一方、エージェンティックAIは、ユーザーの関与が少ない場合でも自律的に行動し、目標達成に向けて能動的にタスクを進めます。マルチエージェントAIとの連携でより高度な問題解決も期待されます。

  • 1つのAIが「意思(目標)」と「自己判断力(行動計画)」を持って行動する仕組み
  • 現状のLLM(大規模言語モデル)とは異なり、「次に何をすべきか」を考えながら、自律的に作業・学習・改善するのが特徴
  • 「エージェントとしてのAI」とも言える

📌 例:ユーザーの目標を入力すると、自律的にインターネット検索、文章生成、ファイル操作などを繰り返してタスクを完了するAIエージェント。自己プロンプト生成やメモリ機能を備えています。

AIが自ら検索して情報を収集し、レポートを作成。必要に応じて自分でツールを呼び出す。

ユーザーの業務指示に基づき、メール送信やデータ処理などの業務フローを自動で設計・実行する。複数アプリ連携を自律的に行い、生産性を高めるエージェント型AIの一例です。

具体的な流れ

例として、人間の問いかけから答えまでを以下にご紹介します。

  1. ユーザーの入力を理解:「最新の市場動向をまとめて」と依頼すると、AIはその目標を明確化し、必要なタスク(情報収集・分析・要約)に分解する
  2. 行動計画の立案:目標達成のために「検索 → 情報の抽出 → 整理 → レポート作成」という計画を自律的に立てる
  3. 外部ツールや環境との相互作用:必要であれば自らWeb検索を行い、関連する記事や統計データを収集。さらにスプレッドシートや社内データベースにアクセスし、複数の情報源を組み合わせる
  4. タスクの実行と改善:中間結果を確認しながら「情報が不足している」と判断すれば追加検索を行い、途中で計画を修正する
  5. 結果の提示:最終的に整理されたレポートをユーザーに提示し、必要に応じて次のステップ(プレゼン資料化やメール送信)まで自律的に進める

このように、単なる応答に留まらず、「自分で考え、動き、調整しながら答えにたどり着く」のがエージェンティックAIの大きな特徴です。


マルチエージェントAI(Multi-Agent AI)とは

マルチエージェントAIとは、複数の自律的なAIエージェントが相互に協力・競合しながらタスクを遂行するシステムです。各エージェントは独立した目標や知識を持ち、分散環境で情報を共有・交渉し、全体として高度な問題解決を目指します。物流、ゲームAI、スマートシティなどで活用され、柔軟でスケーラブルな意思決定や最適化が可能になる点が特徴です。エージェント同士の連携設計が成功の鍵となります。

  • 複数のAIエージェントが連携・分担・協調してタスクを解決する枠組み
  • 各エージェントには専門性や役割(例:対話役、計画役、評価役など)が与えられていて、全体で1つの目的を果たす
  • 人間社会のチームのように、相互作用・競争・協調をすることもある

具体的な流れ

例として、人間の問いかけから答えまでを以下にご紹介します。

  1. ユーザーの入力を理解:「新製品を欧州市場に投入する際の戦略を提案して」と依頼すると、システムは全体の目標を「市場戦略立案」として定義する
  2. エージェントの役割分担
  • 調査エージェント:現地の市場データや競合情報を収集
  • 分析エージェント:収集した情報を統計的に分析し、トレンドを抽出
  • 戦略立案エージェント:分析結果を基に複数の戦略案を設計
  • 評価エージェント:リスクやコストを比較し、最適案を選定
  1. 協調と調整:各エージェントが独自の視点で提案し、互いに情報をやりとりしながら最終案を洗練させる。矛盾があれば議論・交渉して解決する
  2. 統合と最終出力:プロジェクトマネージャー的な「統括エージェント」が全体をまとめ、ユーザーに一貫性のある戦略提案を提示する
  3. 追加対応:ユーザーから「この戦略をプレゼン資料にして」と指示があれば、文書作成エージェントやデザインエージェントが連携してスライドを生成する

このように、マルチエージェントAIは「複数の専門家AIがチームを組んで、ユーザーの問いに対して最適解を導く」仕組みであり、人間社会のプロジェクトチームに近い動作を実現します。

📌 例:ある問題を複数のAIが議論して解決策を導き出す「AI版会議システム」や、プロジェクトマネジメントAIチームなど。


両者の関係

視点 エージェンティックAI マルチエージェントAI
定義 自律的な1つのAIエージェント 複数のエージェントの集合体
対象 単独の賢いAI チームで連携するAI群
関係性 マルチエージェントの構成要素になれる 複数のエージェンティックAIが構成する
実装イメージ AutoGPT/AgentGPTなど
(自動タスク分解・自己評価)
CrewAI/MetaGPTなど
(ロール分担・合意形成)
現実世界の喩え 自分で考える一人のプロフェッショナル 専門家が集まるプロジェクトチーム
評価 自己点検 相互評価/合意形成

つまり、マルチエージェントAIは「複数のエージェンティックAI」で構成されていることが多いという関係です。両者は階層的な関係にあり、「Agentic AIが進化するとMulti-Agent AIの構成単位になる」と考えると理解しやすいです。


主要ベンダーの取り組み

企業名 取り組み内容 リンク
Kyndryl社 ダイナミックに進化してビジネスパフォーマンスを向上させるエージェントAIフレームワークを発表 公式発表
IBM エージェント型AIのガバナンスとセキュリティーを統合する業界初のソフトウェアを発表 プレスリリース
コグニザント マルチAIエージェントサービス「Neuro® AI Multi-Agent Accelerator」本格提供開始 公式ブログ

エージェント型AI・マルチエージェントAI活用のポイント

  1. 目的の明確化:どのような課題を解決したいのかを明確に設定し、AIの役割を定義する
  2. タスク分解:複雑な課題を細かいタスクに分け、それぞれを適切なエージェントに割り振る
  3. 協調と競合の設計:マルチエージェントの場合、エージェント同士が協力するのか競い合うのかを設計する
  4. 人間とのインタラクション:エージェントが人間からの指示や質問を理解しやすいインターフェースを整える
  5. 知識共有の仕組み:複数エージェントが学習した情報を効率的に共有できる基盤を用意する
  6. フィードバックループの構築:人間や環境からのフィードバックを取り込み、エージェントが行動を改善できるようにする
  7. 責任の明確化:AIが導き出した結果に対して、誰が責任を持つのかをあらかじめ定義する
  8. スケーラビリティ:少数のエージェントから多数のエージェントへと拡張できるアーキテクチャを設計する
  9. セキュリティと倫理:データ利用やエージェント間通信でのセキュリティを確保し、倫理的配慮を徹底する
  10. 評価と改善の仕組み:定期的に成果を評価し、タスク配分や連携方法を見直す仕組みを持つ

まとめ

エージェンティックAIは特定の役割を担う知能として、人間の問いや課題に対し迅速かつ柔軟に対応する特徴を持ちます。さらにマルチエージェントAIは、複数のエージェントが連携・分担することで、単独では困難な複雑な問題にも対応可能です。

今後、業務効率化や新たな価値創出の場面で活用が進むと考えられますが、人間との協働設計、責任の所在、倫理的配慮が不可欠です。技術的理解と運用上の工夫を両立させることで、AIを最大限に活かす未来が開けるでしょう。


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この記事の監修者

小薗井 康志@Kyndryl

半導体(インテル)の技術者から経営者、サーバーベンダー(Dell)の技術者を経て現在日本アイ・ビー・エム株式会社でIT Specialistとして働いております。クラウド上で様々な面白いアプリケーションを多くの人が開発できるようにSoftLayerを中心にIBMのクラウド製品をサポートしております。

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