かつての日本企業では、主にオンプレミス環境において、同じツールを10年以上利用し続けるケースが多く見られました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響や新しい働き方の普及により、SaaS型のクラウドサービスの利用が増加しています。しかしながら、SaaS型クラウドサービスには新たな脅威(リスク)も生じています。本記事では、同じツールを使い続ける脅威(リスク)、SaaS型クラウドサービスには新たな脅威(リスク)を明らかにし、組織としての留意すべき事項を解説します。
はじめに
これまで、日本のIT投資戦略の第一位は何年間も「コスト削減」でした。そのコスト削減の多くは、ソフトウェアライセンスやサーバー機器などの見えるコストに向けられていました。しかし、見えるコストを削減しても、見えないコストが増加しては意味がありません。労働人口が減少し、採用が難しい現状の課題を解決するには、組織の生産性を重視したIT投資戦略が求められています。
同じツールの長期間利用で発生する5つのリスク
日本の組織では同じツールを長年使い続け、長期間の安定業務を求めてきました。業務は安定してもビジネスの変化に適用できなければ競争力の低下やサービス価値の低下を招いてしまいます。
同じツールを使い続けることで発生する代表的な5つの脅威(リスク)ご紹介します。
1,技術的な対応の遅れ
時代と共に技術は進化し、新しい機能やより効率的な方法が登場しますが、これらの新しい技術や機能から取り残されるリスクがあります。
2,柔軟性の喪失
長期間同じツールを使用することで、特定のワークフローや方法に固執する傾向が強まり、新しい方法や変更んじ対する柔軟性が低下する可能性があります。
3,効率性の低下
時代とともに業務のニーズや要件が変わる中、古いツールは現在のニーズに合わせて最適化されていない場合もあります。
4,教育・研修の困難
新しいメンバーや新卒者が組織に参加した際、古いツールや方法を習得するのは難しくなることがあります。また、新しい世代のユーザーは最新のツールや技術に慣れているため、古いツールの導入や研修が難しくなる可能性があります。
5,組織・チームを阻害
使いにくいツールや時代に合わないツールを利用することで利用者のモチベーションや成長意欲を阻害することがあります。特にエンジニア職の場合は、最大の成果が出せる環境を整えてくれる企業で働きたいと願っています。
時代にあったツール選定こそが従業員エンゲージメントを向上させ、雇用を創出し、組織・チームを活性化します。
ここで勘違いしてはいけないのは、ツールを長期間利用せずに、頻繁にツールを変更するという意味ではありません。
新しいツール選定戦略では、ツールだけでなく、ツールを開発するベンダーの姿勢や考え方も重要な要素となっています。その理由は、製品開発もしくは販売会社が目指す価値と顧客が目指す方向にギャップが生じると、製品機能が求めるものと乖離し、利用者にとって重大な足枷になる現実が浮き彫りになってきたからです。
以下に、新しく顕在化した問題「製品開発の方向性とユーザーの方向性とのギャップ」について解説します。
製品開発の方向性とユーザーの方向性とのギャップ
製品開発ベンダーの方向性やビジョン、文化と、製品を利用するユーザーとの間にギャップが生じることがあります。ユーザー企業は、顧客や業界の変化に応じてビジネスを展開したいと考える一方、製品開発ベンダーは自社の製品ロードマップや目指す方向性に従って機能を追加・更新していきます。その結果、ユーザー企業が求める機能やサービスと利用する製品に乖離が生まれ、大きな脅威となる可能性が出てきました。
これには、製品を利用するユーザーだけでなく、製品を取り扱う販売パートナーにも影響を与えます。事前通知のない急激な機能拡張やユーザーインターフェースの変更により、販売パートナーは顧客対応に追われ始め、サポート工数が増大し、意図しないリソース不足に陥り、自分たちの本来の価値を提供できなくなることがあります。さらに、ユーザー企業側にも利用者への教育コストやサポートコストが増大するなど、見えない負担が発生します。目に見えるライセンスコストだけでなく、製品を利用することで発生する見えないコストや負担も考慮しなければなりません。
製品開発ベンダーは良かれと思って開発しているものの、それを求めていないユーザーやパートナーも存在することを忘れてはなりません。最新の製品選定戦略を考えるにあたり、製品開発ベンダーとパートナーやユーザーとの方向性の乖離によって、企業組織やチームが本来目指すべき目標を達成できなくなるという脅威を考える必要があります。
ベンダーの方針転換によって影響を受けた例
ここではいくつかの例をご紹介いたします。
世界的に有名なプロジェクト管理ツールの場合
ツールベンダーはSaaS版の製品を今後注力するという方針を打ち出し、10ユーザーから適用されていたオンプレミス版のライセンスが500ユーザー以上に変更され、500ユーザー未満のユーザーは強制的にSaaS型のクラウド版へ移行しなければならなくなりました。
オンプレミス版とクラウド版の機能は同じではなく、提供された移行ツールも完全移行を約束するものではありませんでした。
完全な移行はできないものの高額な移行作業費用やライセンス費用も増大し、機能が同じではないため業務にも影響を与えました。さらに500ユーザー以上で利用できるオンプレミス版のライセンスは倍以上の価格で提供されるという結果になりました。
世界的に有名な文書管理ツールの場合
これまでサーバー単位のライセンス提供だったものが、突然にユーザー単位のライセンスに変更され、年間ライセンス費用が数百万だったものが数千万に増額されたという例があります。
ユーザー企業からみれば業務の生産性や利用価値は変わらないですが、ライセンス費用は数十倍になるというものでした。
この例では、いきなり変更されたためユーザー企業としては別製品へ移行する時間も与えらませんでした。同一バージョンであればライセンス費用は変わらないという措置がとられたものの、サポート終了バージョンであったためサポートに制限が発生してしまいました。
別ツールへの切り替えを検討するキッカケ
現在利用しているツールから別ツールへ切り替えするキッカケとなる6つのポイントをご紹介します。
| ポイント | 概要 |
| 技術の進歩や変化 |
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| 業務ニーズの変化 |
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| セキュリティの懸念 |
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| コストと効果のバランス |
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| ユーザーのフィードバック |
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| 統合と互換性の問題: |
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これらのタイミングを踏まえ、ITツールの利用を定期的に見直すことが重要です。リスクとコストを最小限に抑えながら、最新の技術やビジネスニーズに対応するための適切なツールを選定することで、業務効率を最大化することが期待できます。
新しいITツール選定戦略とは
最新のITツール選定戦略とは、定期的にアセスメントを行い、組織全体の生産性を確認する必要があります。
その仕組み化を行うには、以下のような事項を定期的に実施することが必要です。
| 組織の状況 | 法改正や社会情勢、顧客や競合、取引先の変化、会社の方針、計画などを把握する |
| 利用者からのアンケート調査やフィードバックなどから利用者の問題、要求事項などを把握する | |
| セキュリティ監査とコンプライアンスチェックによる脆弱性を把握する | |
| 計画と実行 | 「組織の状況」と「アセスメント評価」「改善検討」を実行する計画を策定し、実行する |
| コスト管理 | 組織におけるツール種別やツール名称、用途などを整理し、重複排除、効果測定によって二重投資を回避し、最適化を行う。 また、地政学的なリスクを考え、複数年契約によって価格変動を抑止するという決断も最近では一般的になりつつあります。 |
| ベンダー管理 | 開発ベンダーの経営状況や合併、方針などを監視する。 |
| ツール管理 | ITツールのポートフォリオを一元管理し、ツールのライフサイクル(導入、成長、成熟、廃止)を監視する。 |
これからのITツール選定戦略では、ITツールだけにフォーカスするのではなく、利用者やベンダーにも目を向け、総合的に評価と判断する必要があります。
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