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日本企業の成長を止める「リーダーの善意ある権限集中」と、ISO 56001による組織変革

  • 著者 : INNOVATION WORLD 編集部
  • 26.07.03

責任は私が持つ。だから権限も私にある

日本企業の現場では、いまも少なからず次のような言葉が聞かれます。

「最終的に責任を持つのは私だから、権限も私にある」

一見すると、この言葉は責任感のあるリーダーの発言に聞こえます。部下に丸投げせず、自分が最終責任を引き受ける。組織を混乱させないために、重要な判断は自分が行う。そう考えれば、むしろ頼もしいリーダー像のようにも見えます。

しかし、この言葉が組織運営の基本思想になったとき、組織は次第に成長力を失っていきます。なぜなら、責任を持つことと、すべての権限を自分に集中させることは、本来同じではないからです。

もちろん、経営者や部門長、プロジェクト責任者が最終責任を持つことは当然です。問題は、最終責任を理由にして、意思決定権限まで過度に集中させてしまうことにあります。その結果、現場は自分で考えなくなり、組織は上位者の判断を待つだけになり、変化への対応力を失っていきます。

これは単なるマネジメントスタイルの違いではありません。企業の成長力、変化対応力、イノベーション能力を左右する本質的な問題です。

特に、現在のように市場、技術、顧客、競争環境が急速に変化する時代において、リーダー1人の経験や判断力だけで組織全体を成長させることは困難です。必要なのは、リーダーがすべてを決める組織ではなく、組織全体が変化を捉え、判断し、行動し、学習できる状態です。

その意味で、ISO 56001、すなわちイノベーション・マネジメントシステムの考え方は、日本企業が抱える権限集中型の組織運営を見直すうえで、非常に有効な枠組みになる可能性があります。

ISO 56001:2024は、イノベーション・マネジメントシステムを構築し、実施し、維持し、改善するための要求事項とガイダンスを示す国際規格です。イノベーションを偶発的なひらめきや一部の人材の能力に依存させるのではなく、組織として継続的に価値を創出するための仕組みとして捉える点に特徴があります。日本規格協会 JSA GROUP Webdeskから英・日対訳版も提供されています。

では、なぜ「責任を持つから権限も自分にある」というリーダーの下では、組織は成長しにくくなるのでしょうか。そして、ISO 56001はこの問題にどのような解決の視点を与えるのでしょうか。


責任感の強いリーダーほど、組織を止めてしまうことがある

多くの場合、権限を手放さないリーダーは、必ずしも悪意を持っているわけではありません。むしろ、責任感が強い人ほど、権限を自分に集めようとします。

「失敗したら自分が責任を問われる」
「部下の判断に任せて問題が起きたら困る」
「経営から説明を求められるのは自分だ」
「最後に判断する立場なのだから、途中も把握しておく必要がある」

このような考えは、管理職や経営層にとって自然なものです。特に、失敗を強く責める文化がある組織では、リーダーが慎重になるのは当然です。

しかし、この慎重さが行き過ぎると、組織は動けなくなります。

現場が顧客の変化に気づいても、技術部門が新しい可能性を見つけても、営業が市場の違和感を感じても、最終的には上位者の承認を待たなければならない。判断がリーダーの手元に集中し、すべての案件がそこを通過しなければ進まない。すると、組織の成長速度は、組織全体の能力ではなく、リーダー1人の処理能力に依存するようになります。

これは非常に大きな制約です。

本来、組織とは、多様な人材、多様な経験、多様な情報、多様な視点を持つからこそ価値があります。ところが、判断権限が一部のリーダーに集中すると、組織全体の知恵は使われません。多くの情報が上位者に集約される過程で要約され、加工され、時には削ぎ落とされます。結果として、リーダーは「自分は十分な情報をもとに判断している」と思っていても、実際には現場で起きている変化を正確に捉えられていないことがあります。

さらに深刻なのは、現場が次第に考えなくなることです。

何度提案しても、最後は上位者の感覚で覆される。検証結果を示しても、「自分はそう思わない」と判断される。顧客の声を伝えても、「過去の経験では違う」と退けられる。このような経験が続くと、現場は学習します。

「どうせ最後は上が決める」
「自分たちが考えても意味がない」
「余計な提案をすると責任だけ負わされる」
「無難にやっていた方がよい」

この状態になった組織では、表面的には秩序が保たれているように見えます。しかし、内側では自律性、挑戦意欲、学習能力が失われています。


日本企業に残る「上が決め、下が実行する」成功体験

この問題は、個々のリーダーの資質だけで説明できるものではありません。背景には、日本企業が長く引き継いできた組織運営の成功体験があります。

かつて市場が成長していた時代には、経営層や上位管理職が方向性を決め、現場が効率よく実行するという仕組みが有効でした。需要が拡大し、製品やサービスの改善余地が明確で、競争のルールも比較的安定していた時代には、上位者が計画し、現場が実行するという分業は高い効率を生みました。

その時代において重要だったのは、変化を探索する力よりも、決められたことを正確に、速く、効率よく実行する力でした。組織を機能別に分け、責任範囲を明確にし、上位者が計画を立て、現場が忠実に実行する。このモデルは、一定の環境下では非常に強力でした。

しかし、現在の事業環境は大きく異なります。

市場は成熟し、顧客ニーズは多様化し、技術は急速に変化し、競争相手は同業他社だけではなくなりました。生成AI、クラウド、データ活用、サブスクリプション、プラットフォームビジネスなど、産業構造そのものを変える技術や事業モデルが次々と登場しています。

このような環境では、上位者がすべてを見通し、正解を示すことは困難です。むしろ、現場に近い人ほど変化の兆しに気づくことがあります。顧客との対話、問い合わせ、クレーム、利用データ、営業現場での違和感、開発現場での技術的可能性。そのような小さな情報の中に、次の成長機会が潜んでいることがあります。

にもかかわらず、組織が昔の成功体験のまま「上が決め、下が実行する」という構造を続けていると、変化の兆しは組織の意思決定に反映されません。

  • 現場は情報を持っていても、判断権限を持っていない
  • 管理職は権限を持っていても、現場の変化を十分に理解していない
  • 経営層は最終判断を行うものの、判断材料が加工された情報に限られている

こうして組織は、環境変化に対応しているつもりで、実際には過去の延長線上の判断を繰り返してしまうのです。


「提案して終わり」は、プロセスではない

多くの企業では、イノベーションや新規事業開発の仕組みとして、次のような流れが存在します。

  • 現場がアイデアを出す
  • 部門長が確認する
  • 経営層に提案する
  • 経営層が検討する
  • 採択されたものだけが次に進む

一見すると、これはプロセスのように見えます。しかし、実際にはプロセスというよりも、単なる上申ルートです。

本来のプロセスとは、目的があり、判断基準があり、役割があり、権限があり、評価と改善の仕組みがあるものです。単に「経営に提案するまでの手順」があるだけでは、組織的な価値創出プロセスとはいえません。

特に問題なのは、提案後の判断が経営層や一部リーダーの感覚に依存することです。

「面白いと思うか」
「社長が納得するか」
「役員会で通りそうか」
「すぐに売上につながりそうか」
「過去の事業と相性がよいか」

このような基準で判断されると、現場は次第に、顧客価値や市場機会よりも、上位者に通りやすい提案を作るようになります。つまり、イノベーション活動が「新しい価値を生み出す活動」ではなく、「上位者を説得する活動」に変質してしまうのです。

これでは、組織は成長しません。必要なのは、提案を上げる仕組みではなく、以下のような価値を生み出すための仕組みです。

  • 機会を探索し
  • 仮説を立て
  • 検証し
  • 学習し
  • 資源配分を見直し
  • 価値創出につなげる

つまり、アイデアを集めるだけではなく、組織として価値を生み出すまでの一連のプロセスが必要です。

ここでISO 56001の考え方が有効になります。

ISO 56001は、イノベーションを個人のひらめきや一部の優秀な人材に依存させるのではなく、組織として継続的に価値を創出するためのマネジメントシステムとして捉えます。単なるアイデア募集や新規事業コンテストではなく、組織の意図、方針、戦略、目標、役割、権限、資源、プロセス、評価、改善を結びつける考え方です。


部門を作っても、仕組みを作ったことにはならない

多くの日本企業では、課題が見つかると新しい部門を設置することがあります。
例えば、次のような部門や担当を設けるケースです。

  • 新規事業開発部門を作る
  • DX推進部門を作る
  • イノベーション推進室を作る
  • オープンイノベーション担当を置く
  • 生成AI活用推進チームを作る

もちろん、専門部門を設けること自体に問題があるわけではありません。むしろ、組織として重要なテーマに取り組む意思表示として有効です。

しかし、部門を作っただけで仕組みができたと考えるのは危険です。

  • 新しい部門に目標だけを与え、十分な権限を与えない
  • 既存部門との関係を整理しない
  • 予算配分の権限がない
  • 経営層との接続が曖昧である
  • 事業化の判断基準がない
  • 失敗したときの扱いが決まっていない

これでは、部門はあっても仕組みは存在しません。

現場から見ると、「新しい部門ができたが、何をどこまで決められるのか分からない」という状態になります。新規事業部門から見ると、「提案は求められるが、実行に必要な資源や権限がない」という状態になります。既存事業部門から見ると、「自分たちの業務に関係するのか、協力すべきなのか分からない」という状態になります。

結果として、部門間の調整に時間がかかり、意思決定が進まず、最終的には経営層や一部リーダーの判断に戻ってしまいます。

ISO 56001の観点では、体制とは単に組織図を作ることではありません。誰が何を担い、どの権限を持ち、どの責任を負い、どのプロセスで判断し、どの資源を使い、どの基準で評価するのかを明確にすることが必要です。

つまり、「部門を作る」ことと「仕組みを作る」ことはまったく違います。


権限委譲とは、丸投げではない

権限集中型のリーダーがよく抱く不安に、「任せると混乱する」というものがあります。
確かに、何の基準もなく、何の範囲も決めず、何の支援もせずに任せれば、混乱します。それは権限委譲ではなく、丸投げです。
本来の権限委譲には、明確な前提が必要です。

項目 確認すべき内容 明確にしない場合に起きる問題
目的 何を目的としているのか 何のために行動するのか分からず、判断や行動がばらつく
範囲 どの範囲まで現場が判断してよいのか どこまで自分たちで決めてよいか分からず、結局上司確認が増える
リスクの許容 どのリスクは許容できるのか 少しでも不確実性があると動けなくなる、または過剰なリスクを取ってしまう
財務・予算 どの金額までは現場で使えるのか 予算判断のたびに承認待ちとなり、行動スピードが落ちる
裁量 どの条件を超えたら経営判断に上げるのか 現場判断と経営判断の境界が曖昧になり、責任の所在も不明確になる
成功条件 何をもって成功とするのか 成果の評価基準が曖昧になり、後から評価がぶれる
撤退条件 何をもって中止・撤退とするのか 失敗を認められず、効果の薄い取り組みを続けてしまう
学習の仕組み 失敗した場合、何を学習として残すのか 失敗が責任追及で終わり、次の改善や意思決定に活かされない

これらが明確であれば、リーダーがすべてを判断しなくても、現場は自律的に動くことができます。逆に、これらが曖昧なままでは、現場は判断できません。判断できないから上位者に確認する。上位者は「結局、自分が決めるしかない」と考える。こうして権限集中が固定化されていきます。

重要なのは、リーダーが権限を手放すことではありません。リーダーが、権限を適切に分配できる状態を作ることです。

そのためには、意思決定の階層を設計する必要があります。たとえば、顧客ヒアリングや小規模な検証は現場判断で実施できるようにする。一定金額以下のPoCはチーム判断で進められるようにする。一方で、大規模投資や事業化判断は経営層が行う。中止判断についても、あらかじめ定めた基準に基づき、感情ではなく事実で判断する。

このように、判断の重さに応じて権限を設計すれば、組織は速く動きながらも統制を失いません。


失敗を避ける組織ではなく、学習できる組織へ

イノベーションを阻害する大きな要因の一つが、失敗に対する組織の姿勢です。

一部の日本企業では、失敗した案件だけが強く問題視されることがあります。新しい挑戦をした結果うまくいかなかった人よりも、何もしなかった人の方が評価上の不利益を受けにくい。リスクを指摘した人よりも、波風を立てなかった人の方が評価される。こうした組織では、挑戦は合理的な選択ではなくなります。

その一方で、「失敗から学ぶ」という言葉が安易に使われることもあります。十分な仮説もなく、検証設計もなく、周囲の合理的な指摘も無視して進めた結果、失敗した後に「学びがあった」と片付ける。これもまた、本来の学習ではありません。

重要なのは、失敗を許容することではなく、検証と学習を仕組み化することです。

  • 何を仮説としていたのか
  • どの前提を検証したのか
  • どの結果が得られたのか
  • 仮説は支持されたのか、否定されたのか
  • 次に何を変えるべきなのか
  • この知見は他の事業や部門に活かせるのか

ここまで整理されて初めて、失敗は学習資産になります。

ISO 56001の導入においても、単に「挑戦を奨励する」だけでは不十分です。挑戦が学習に変わり、学習が次の意思決定に反映され、組織能力として蓄積される必要があります。

この点で、ISO 56001は、失敗を感情的に扱うのではなく、マネジメントシステムの中で評価し、改善につなげるための枠組みとして活用できます。


経営の役割は「承認者」ではなく「設計者」である

権限集中型の組織では、経営層や上位リーダーが承認者として機能しがちです。案件が上がってくる。資料を確認する。質問する。判断する。通すか、止めるかを決める。

もちろん、重要な案件について経営が判断することは必要です。しかし、経営の役割が承認に偏りすぎると、組織全体は受け身になります。

これからの経営に求められるのは、個別案件の承認者である以前に、組織が継続的に価値を創出できる仕組みの設計者であることです。

経営は、どの領域でイノベーションを必要としているのかを示す必要があります。どのような価値を生み出したいのか、どのような変化を機会と捉えるのか、どのリスクを許容するのか、どの時間軸で成果を見るのかを明確にする必要があります。

そのうえで、現場や部門が判断できる基準を整え、必要な資源を配分し、活動結果をレビューし、学習を組織に還元する必要があります。

このような経営レビューは、単なる進捗確認ではありません。イノベーション活動全体を見渡し、機会とリスクの変化を確認し、ポートフォリオとして資源配分を見直し、継続・中止・拡大を判断する場です。

経営がこの役割を果たせば、現場は「上に通すための提案」ではなく、「価値を生み出すための検証」に集中できるようになります。


ISO 56001は、権限集中型組織を変える実践的な道具になる

ISO 56001を導入する意義は、認証取得そのものにあるのではありません。むしろ重要なのは、自社の組織運営を見直す鏡として使うことです。

ISO 56001の導入によって特に期待できるのは、次の5つの変化です。

これまで起きやすかった問題 ISO 56001導入による改善の方向性 期待できる変化
判断がリーダーの経験・好み・役職の強さに依存しやすい 「誰が偉いか」ではなく、「どの基準で判断するか」を明確にする 属人的な判断を減らし、組織として一貫性のある意思決定ができる
部門や担当者は存在していても、誰が何を決めるのかが曖昧になりやすい 誰が何を担い、何を決定し、何に責任を持つのかを整理する 「部門を作っただけ」で終わらず、実際に動ける体制を作れる
アイデア募集や提案で終わり、その後の検証・実装・改善につながりにくい 機会探索、仮説検証、評価、実装、改善までを一連のプロセスとしてつなげる アイデアを実際の価値創出につなげやすくなる
失敗が責められ、挑戦や問題提起が起きにくい 仮説と検証結果に基づいて、失敗を学習材料として扱う 失敗から知見を得て、次の判断や改善に活かせる
経営層が細部の承認や可否判断に追われ、組織全体の仕組みづくりが後回しになる 経営層が、組織が判断・行動・学習できる状態を設計する役割を担う 経営がボトルネックにならず、組織全体の自律性と成長力が高まる

 


ただし、認証取得だけでは組織は変わらない

一方で、ISO 56001を導入すれば自動的に組織が変わるわけではありません。

認証取得が目的化すると、従来の組織課題は温存されたままになります。文書は整っている。会議体もある。方針も掲げている。しかし、実際にはすべての判断が上位者に集中している。現場には責任だけがあり、権限がない。失敗すると責められ、経営レビューは承認と指摘の場になっている。

これでは、ISO 56001は形だけの仕組みになってしまいます。

特に注意すべきなのは、既存の稟議制度や評価制度を変えずに、ISO 56001だけを追加することです。これでは、現場の負担が増えるだけになる可能性があります。新しい書類、新しい会議、新しいチェック項目が増えたにもかかわらず、意思決定の構造は変わらない。これでは、イノベーションを促進するどころか、かえって活動を重くしてしまいます。

ISO 56001を本当に活用するには、経営層自身が変わる必要があります。

「責任を持つから自分が決める」という発想から、
「責任を持つから、組織が判断できる状態を作る」という発想への転換です。

この転換がなければ、ISO 56001は単なる認証プロジェクトで終わります。逆に、この転換が起きれば、ISO 56001は日本企業の組織運営を大きく変えるきっかけになります。


成長する組織は、リーダーを不要にするわけではない

ここで誤解してはならないのは、権限委譲とはリーダーの存在価値を下げることではないという点です。

むしろ、これからのリーダーには、より高度な役割が求められます。

すべてを自分で決めるリーダーは、一見すると強いリーダーに見えます。しかし、その組織はリーダーの能力を超えて成長することができません。リーダーが見えている範囲、理解できる範囲、処理できる範囲が、組織の限界になります。

一方で、組織が判断できる状態を作るリーダーは、自分1人の能力を超えて組織を成長させることができます。現場が変化に気づき、チームが仮説を立て、部門横断で検証し、経営が資源配分を見直し、学習が組織に蓄積される。そのような状態を作ることこそ、これからのリーダーの重要な役割です。

そのためには、リーダー自身の評価基準も変える必要があります。

  • 自分で何件判断したかではなく、組織がどれだけ自律的に判断できるようになったか
  • 失敗を何件防いだかではなく、適切な検証と学習をどれだけ促進したか
  • 部下をどれだけ管理したかではなく、部下の意思決定能力をどれだけ高めたか
  • 短期成果だけでなく、中長期の価値創出能力をどれだけ高めたか

このような評価に変わらなければ、リーダーは権限を手放しません。なぜなら、権限を持ち続けることが、自分の存在価値や評価につながっているからです。


日本企業に必要なのは、責任論から仕組み論への転換である

多くの日本企業では、問題が起きると「誰が責任を取るのか」という議論になりがちです。もちろん、責任の所在を明確にすることは重要です。しかし、それだけでは組織は成長しません。

本当に問うべきは、「なぜその判断になったのか」「なぜ現場の情報が活かされなかったのか」「なぜ早い段階で検証できなかったのか」「なぜ中止判断が遅れたのか」「なぜ学習が次に活かされなかったのか」です。

つまり、個人の責任論だけでなく、仕組みの問題として捉える必要があります。

「最終的に責任を持つのは私だから、権限も私にある」という言葉は、責任感の表れであると同時に、組織の成長を止める危険な思想でもあります。なぜなら、その考え方は、組織全体の判断力を育てる機会を奪ってしまうからです。

これからの日本企業に必要なのは、強い個人に依存する組織ではありません。組織として変化を捉え、判断し、行動し、学習できる仕組みです。

ISO 56001は、そのための一つの有効な枠組みになります。認証取得のためではなく、自社の権限構造、意思決定プロセス、評価制度、学習の仕組みを見直すために活用すべきです。

  • 経営層がすべてを決める組織から、経営層が組織の判断力を高める組織へ
  • 現場が提案するだけの組織から、現場が検証し、学習し、価値創出に関与する組織へ
  • 失敗を責める組織から、仮説と検証を通じて学習する組織へ

この転換ができるかどうかが、これからの日本企業の成長力を左右します。

最後に強調したいのは、責任あるリーダーとは、すべてを自分で決める人ではないということです。

本当に責任あるリーダーとは、組織が正しく判断できる状態を作る人です。
自分がいなければ動かない組織ではなく、自分がいなくても価値創出に向けて動ける組織を作る人です。
そして、そのような組織こそが、不確実な時代において継続的に成長できる組織なのです。


ISO 56001の考え方に沿ったイノベーションの仕組み化は、システムコンシェルジュにご相談ください

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