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全国調査から読み解く、日本企業のイノベーション実態と課題

  • 著者 : INNOVATION WORLD 編集部
  • 25.04.02
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はじめに

現在のビジネス環境において、企業はイノベーションに取り組まなければ「現状維持」すら困難な時代となっています。第4次産業革命の真っただ中で、企業は急激な環境変化への対応が求められています。

当サイトではこれまで、イノベーションを阻害する要因やその解決策について、多くの記事をお届けしてまいりました。今回は、その根拠となるデータとして、文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)による「全国イノベーション調査」の結果をもとに、日本企業におけるイノベーションの現状と課題を解説します。


全国イノベーション調査とは

「全国イノベーション調査」は、文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が実施する、民間企業のイノベーション活動関する公式な統計調査です。

この調査のポイントは以下のとおりです。

調査の特徴

  • OECDおよびEurostatが策定した国際標準『オスロ・マニュアル2018』に準拠し、国際比較が可能な形式で実施。
  • 日本国内の従業者10人以上の民間企業(一部の産業を除く)を対象とした標本調査。
  • 政府の科学技術・イノベーション政策立案・評価の基礎資料として活用。

調査内容(2022年調査の場合)

  • 調査対象:約44万8,000社
  • 調査期間:2019年〜2021年
  • 主な調査項目:
    • イノベーション活動の実施状況
    • プロダクト・イノベーション(新製品・サービス)
    • ビジネス・プロセス・イノベーション(新規または改善した業務プロセス)
    • イノベーション活動に関わる人的資源・協力関係・阻害要因
    • 知的財産活動、デジタル技術の利用状況
    • イノベーション活動と売上高・経営戦略の関係性 など

イノベーションに取り組む理由

調査結果によると、企業がイノベーションに取り組む主な理由は、企業規模にかかわらず「需要変化の予測困難」「競合他社の動向が不透明」「製品・サービスの陳腐化」など、ビジネス環境の先行き不透明さに対する危機感が挙げられています。

小規模企業(従業員10〜49人)

理由・要因 該当企業割合(%)
需要変化の予測困難 55%
競合他社の行動が予測困難 57%
顧客離れが生じる価格上昇 41%
製品・サービスがすぐに陳腐化 42%
将来的な技術発展の予測困難 43%
競合他社の製品・サービスによる代替 35%
新規競合他社の参入による市場地位への脅威 39%

 

中規模企業(従業員50〜249人)

理由・要因 該当企業割合(%)
需要変化の予測困難 68%
競合他社の行動が予測困難 61%
顧客離れが生じる価格上昇 45%
製品・サービスがすぐに陳腐化 47%
将来的な技術発展の予測困難 52%
競合他社の製品・サービスによる代替 47%
新規競合他社の参入による市場地位への脅威 52%

 

大規模企業(従業員250人以上)

理由・要因 該当企業割合(%)
需要変化の予測困難 71%
競合他社の行動が予測困難 67%
顧客離れが生じる価格上昇 51%
製品・サービスがすぐに陳腐化 53%
将来的な技術発展の予測困難 58%
競合他社の製品・サービスによる代替 54%
新規競合他社の参入による市場地位への脅威 51%

 

考察

この調査結果から分かることは、企業の規模を問わず、ビジネス環境が急速に変化し、先行きを予測するのが困難であることが明確になりました。

そのため、イノベーションに取り組まなければ、現状を維持することさえ難しくなることが示唆されています。
また、企業規模が大きくなるほど、市場の変化に敏感に反応していることも分かります。
さらに、価格上昇による顧客離れへのリスク意識が高いこともわかりました。
イノベーションは、企業が「生き残るための選択」として求められています。


イノベーションを阻害する要因

企業規模によりイノベーションを妨げる要因は異なります。
以下は「全国イノベーション調査 2022年(2019〜2021年対象)」におけるイノベーション活動の阻害要因ランキング(企業規模別、上位10位)を示したものです​。

 

小規模企業(従業員10〜49人)

順位 阻害要因 該当企業割合(%)
1位 自社内における能力のある人材の不足 52%
2位 異なる優先事項の存在(本業が忙しいなど) 48%
3位 イノベーション活動にかかるコストが高すぎる 45%
4位 需要の不確実性 40%
5位 助成金・補助金の獲得困難 37%
6位 情報の不足(技術・市場・顧客など) 34%
7位 協力パートナー(企業・大学など)の不足 32%
8位 組織文化・従業員の抵抗 30%
9位 自己資金の不足 26%
10位 市場における競争が激しすぎる 23%

 

中規模企業(従業員50〜249人)

順位 阻害要因 該当企業割合(%)
1位 自社内における能力のある人材の不足 45%
2位 異なる優先事項の存在(本業が忙しいなど) 41%
3位 イノベーション活動にかかるコストが高すぎる 39%
4位 需要の不確実性 34%
5位 助成金・補助金の獲得困難 31%
6位 情報の不足(技術・市場・顧客など) 28%
7位 組織文化・従業員の抵抗 27%
8位 協力パートナー(企業・大学など)の不足 25%
9位 自己資金の不足 21%
10位 市場における競争が激しすぎる 19%

 

大規模企業(従業員250人以上)

順位 阻害要因 該当企業割合(%)
1位 自社内における能力のある人材の不足 43%
2位 異なる優先事項の存在(本業が忙しいなど) 39%
3位 イノベーション活動にかかるコストが高すぎる 36%
4位 需要の不確実性 31%
5位 助成金・補助金の獲得困難 28%
6位 組織文化・従業員の抵抗 26%
7位 情報の不足(技術・市場・顧客など) 25%
8位 協力パートナー(企業・大学など)の不足 23%
9位 自己資金の不足 18%
10位 市場における競争が激しすぎる 16%

 

考察

この調査結果から、企業規模が小さいほど「資金・人材・情報」が不足している傾向が見えてきました。

つまり、イノベーションを進めるための「支援体制」が、特に小規模・中規模企業では十分に整っていないと考えられます。
一方、企業規模が大きくなるほど、「組織文化」や「社内の優先事項」といった 内部の仕組みや考え方に課題が多くなることもわかりました。

これは、イノベーション文化や経営層のコミットメントが不十分である可能性を示しています。
このように、イノベーション・マネジメントシステム(IMS)の要求事項を参考にすることで、自社に何が足りていて、何が不足しているのかを把握することができます。


企業規模別のイノベーション実現率

調査期間(2019〜2021年)において、実際にイノベーション活動を行った企業の割合(イノベーション実現率)は以下の通りです。

企業規模別のイノベーション実現率

企業規模 実現企業率(%)
小規模企業(10~49人) 29%
中規模企業(50~249人) 40%
大規模企業(250人以上) 55%
全体 32%

 

「イノベーション実現率」は、調査対象企業のうち、実際にイノベーションを実施した企業の割合を示す指標です。

  • 新製品・新サービス(プロダクト・イノベーション)
  • 業務プロセスの革新(ビジネス・プロセス・イノベーション)

のいずれか、または両方を導入・実現した企業の割合を指します。
イノベーション実現率は、企業や国のイノベーション活動の「実行状況」や「活性度」を表す代表的な指標です。 特にNISTEP(科学技術・学術政策研究所)の全国イノベーション調査では、国際比較や経年推移でこの指標が使われています。


イノベーション実現企業における代表的な成果

本調査によって、イノベーションに取り組んだ企業では、以下のような成果が確認されています。

項目 指標 成果
売上への貢献 プロダクト・イノベーションによる売上率 イノベーション実現企業の総売上高のうち、イノベーションによる売上比率は平均20%
市場新規性の達成 市場新規プロダクト・イノベーション実現企業の割合 プロダクト・イノベーション実現企業は約30%
その内13%の企業は「世界初の新プロダクト」を導入
ビジネス・プロセス改善 ビジネス・プロセス・イノベーション実現企業率 ビジネス・プロセス・イノベーション実現企業率(全体):28%
イノベーション活動実行企業:58%
業務効率化・コスト削減・生産性向上の成果を出しています。
環境便益創出 環境便益創出イノベーション実現企業率 全企業の16%
最終消費者または自社の環境負荷低減につながるイノベーションを実現
COVID-19対応 COVID-19対応イノベーション実現企業率 全企業の11%
感染症対応の新商品・新サービスや業務プロセス改善を実現

おわりに

今回の調査から、日本企業は規模を問わず、急速に変化するビジネス環境への対応としてイノベーションに取り組んでいることが明らかになりました。しかし、一過性の取り組みに終わらせず、継続的にイノベーションを推進するためには、個人や特定部門に依存するのではなく、企業全体の「仕組み」としてイノベーションを定着させる必要があります。

そのためのフレームワークとして、国際規格「ISO56001(イノベーション・マネジメントシステム)」が注目され、日本でも、多くの企業がこの規格の導入を検討し始めています。

ISO56001 / ISO56002の詳細については、株式会社システムコンシェルジュまでお問い合わせください。


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この記事の監修者

INNOVATION WORLD 編集部

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