はじめに
日本社会は危機的な人口減少によって、これまで蓄積された経験や知識が失われつつあります。ビジネス組織においてナレッジが継承されないと、以下のような影響を及ぼす可能性があります。
1. 業務効率の低下
ナレッジが継承されないことで、従業員が同じ問題に何度も取り組んだり、過去の成功事例や失敗事例が生かされずに新たに調査や検証を行う必要が生じます。これにより、業務の効率が低下し、結果として生産性が落ちる原因となります。
2. 属人化による業務停滞
特定の従業員にしか分からない知識やノウハウがあると、その従業員が異動や退職した際に業務が滞るリスクが高まります。これにより、スムーズな業務運営が困難になり、組織全体が一時的に業務を停止し、遅延やコストの増加を招くことになります。
3. 顧客満足度の低下
特に顧客対応の現場でナレッジの共有がされていない場合、顧客からの問い合わせに一貫性のない対応を行う可能性が高まり、顧客満足度の低下に繋がります。これは顧客の信用を損ない、競合他社に顧客が流れてしまうリスクを高めます。
4. イノベーションの停滞
組織内のナレッジが継承されない場合、過去の知識を活用した新たなアイデアや改善案が生まれにくくなり、結果として組織全体のイノベーションが停滞する原因となります。これは競争力を削ぎ、市場における競争優位性を失う大きな要因となります。
5. トラブル再発と品質低下
過去の失敗から学ぶ機会が失われ、同じようなトラブルが繰り返される可能性が高まります。これにより、組織全体の品質が低下し、顧客クレームが増加したり、製品やサービスの信頼性が低下することに繋がります。
6. 教育・育成コストの増加
新しい従業員や若手社員が入社した際、ナレッジが共有されていないと、学ぶべき資料や指導内容が不足し、教育にかかる時間やコストが増加します。また、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)においても効率が悪化し、組織全体の成長が遅れる原因となります。
7. 戦略的意思決定の質の低下
過去のデータや知識が組織内で共有されていないと、経営層や管理職が意思決定を行う際に必要な情報が不足し、判断の精度が下がります。これにより、短期的な戦略が効果的に実行できなかったり、誤った判断による損失が発生するリスクが高まります。
実際に、「競合他社との差別化ができなくなってきた。」「製品やサービスの付加価値が低下しため価格勝負になってきた。」「製品・サービスの品質や価値が低下していると感じる」と思いはじめている方々も少なくないと思います。
イノベーションとナレッジ管理の関係
新しい価値を創出する、既存の価値を継続的に維持し、向上させるための仕組みとして、イノベーション・マネジメントシステム(IMS)があります
イノベーション・マネジメントシステム(IMS)の国際標準規格がISO56001であり、ナレッジ管理にもISO30401が公開されています。
イノベーション・マネジメントシステム(IMS)によって、価値を創出し、価値を維持向上させるためにはナレッジ管理が必須要件としてISO56001では定義されています。簡単な図ですが、ISO56001とISO30401の関係を下図に示しました。
ISO30401(ナレッジ・マネジメントシステム)は、ISO56001にISO9001の成果を支える基盤としての重要な要求事項となっています。
文書情報管理とナレッジ管理の違い
ここまで重要なナレッジ管理について、まったくやってこなかった企業は少ないと思いますが、あまり成果を感じていないのが実情です。
それは、文書情報管理を行えば、ナレッジ管理もできると信じられてきたからです。しかしそれは間違いでした。情報管理のライフサイクルは似ていても、文書情報管理とナレッジ管理は目的や与える影響も異なるために同じではないのです。
|
文書情報管理 |
ナレッジ管理 |
|
業務に影響がある要素 |
価値に影響がある要素 |
![]() |
![]() |
|
文書情報は、業務プロセスを円滑に進める効果があります。 そのため文書情報がないと、すぐに業務へ影響が発生してしまい、問題が顕在化するのが文書情報です。 |
ナレッジ情報は、ビジネス価値を維持し、向上させる効果があります。 そのためナレッジ情報がなくても、業務への影響は少ないですが、ビジネスに対しては大きな影響を及ぼします。 |
現代のビジネス環境において、ナレッジ管理は企業の競争力を左右する重要な要素となっています。そのため経営マネージメント層では、ナレッジ管理の重要性を理解し、組織的な仕組みを構築する必要があります。
日本のビジネス組織におけるナレッジ管理の課題
IT投資を増やさない文化
日本の組織では、長年にわたり「コスト削減」がIT投資の主要な目的とされてきました。もちろん、IT投資で業務の生産性が向上し、その結果コストが削減されるのは良いことです。しかし、IT投資そのもののコスト削減が目的になってしまい、そのためにIT投資が伸び悩んでいると考えられます。
実際、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発表した『企業IT動向調査2024』によると、2024年度のIT投資の増減予測では、「10%未満の増加」または「10%未満の減少」「10%以上の減少」が多くを占め、10%以上の大幅な増加を見込む企業は減少しています。物価上昇や賃金の上昇が影響し、10%未満の増加でさえも実質的には現状維持といえる状況です。このように、IT投資で解決すべき課題はあるものの、投資自体は増えないという結果になっています。
やり方を変えない、自前主義のやり方を推進
過去の例として、国際的にはエンタープライズ・コンテンツ・マネジメント(ECM)という市場が成長していた一方で、日本ではECMを導入せず、従来のファイルサーバーでファイルを管理・共有する方法を続けていました。つまり、新しいニーズや変化に対して従来のやり方を変えず、IT投資も行わなかった結果、生産性の向上ができなかったのです。
この点については、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が2019年3月に発表した「情報共有の10年前,現在,これから 成功・失敗談を交えて」にも同様に解説されています。
ツールをサポートするベンダーの力量
ツールを導入しても、使い方や業務の進め方を変えなければ成果は出ません。しかし、ツールを変えることで業務のやり方を見直すきっかけになることもあります。
今の時代、ユーザー企業はツールの機能や価格だけでなく、サポートしてくれるベンダーがコンサルティング力を持つソリューションベンダーかどうかを見極め、問題解決の良きパートナーとして共に取り組む姿勢が求められています。
また、労働人口の減少により、ユーザー企業側でも人的リソースが大きな課題となっています。ITベンダーはユーザー企業に要求事項や解決策を考えさせるのではなく、その企業の状況に合わせた最適な提案ができないと、結果としてユーザー企業に大きな負担をかけることになります。
ガートナー社では、このような力量があるベンダーをジェネレーティブプロバイダーと定義しています。
やっていることが目的になっている
最近では、国際市場で成長しているナレッジ管理やイノベーション管理においても、日本ではMicrosoft 365(ExcelやWordなど)の汎用ツールを活用し、コストをかけずに多くの手間をかけて対応しようとするケースが多く見られます。人口が減少し、人的リソースの確保が難しくなっている現在でも、依然として手間のかかる方法が選ばれています。
プロセスや方法論がいくら優れていても、それを支えるITツールが専用のものではなく汎用ツールであるため、そのギャップを人手で補おうとする発想は、人口が増えていた時代には通用しました。しかし、人口が減少し、人的リソースが貴重になっている今は、手間を省き、生産性を高めるために専用ツールへの投資が求められます。
もし、これを行わずに従来通り人手に頼ったナレッジ管理を続ければ、ナレッジ管理を行っているように見えても、実際には効果が十分に得られないのは当然の結果です。
|
投資をせずに効果だけを求めた場合 |
投資をして効果を求めた場合 |
![]() |
![]() |
日本の組織では「IT投資が十分に行われない」「従業員の手間やコストが軽視されている」といった現場からの不満がよく聞かれます。これらの課題を解決するには、業務を効率化するための仕組みを作るために、組織として積極的に投資することが必要です。
組織的なナレッジ管理の仕組みを構築する方法
ナレッジ管理を組織全体で機能させるためには、一部門や個人に任せるだけでは十分ではありません。特定の部門や個人にナレッジ管理を任せても、組織全体にその目的が伝わっていなければ、その活動は限られた範囲にとどまってしまいます。まず、組織のリーダーがナレッジ管理の意図を明確に伝え、そのためのサポート体制を整えることが重要です。このために、下図のような組織体制を構築することが必要です。
ナレッジ管理を成功させるためのプロセス
ナレッジ管理を成功させるためには、以下のプロセスを組織的に機能させる必要があります。前述のナレッジ管理の仕組みは、このプロセスを機能させるための仕組みとなります。
そして、上記のプロセスを実現するための重要なプラットフォームがナレッジ管理ツールとなります。
ナレッジ管理ツールを選定する時の重要ポイント
ナレッジ管理ツールを選定する場合、ツール自体の機能や価格だけにとらわれてはいけません。ツールやサポートを提供するベンダーがナレッジ管理の方法論を理解し、組織状況に合わせて適切にアドバイスできるパートナーであることが重要なポイントです。
生成AI機能を搭載したナレッジ管理ツール
生成AI機能を活用してナレッジ管理を効率化するツール「ナレッジ管理ツール『ONES Wiki』」と、方法をご紹介します。
ONES Wikiの特長
|
誰でも簡単に利用できる操作性 |
Microsoft Wordのような操作でページを作成できる |
|
インポート / エクスポート |
Microsoft WordやExcelからのインポート、エクスポートが可能 |
|
情報の構造化 |
ページだけでなく、スペースも構造化することが可能 |
|
情報の全文検索 |
添付ファイルの中身も含めた全文検索ができ、ナレッジ管理、プロジェクト管理など製品を横断した全文検索を提供 |
|
情報の変更履歴管理 |
ページに対して、いつ、誰が、どこを修正したのか履歴を管理し、過去から復元することが可能 |
|
プロジェクト管理、タスク管理との統合 |
プロジェクト管理ツール『ONESProject』との完全統合が可能 プロジェクト管理の成果物管理やプロジェクト管理側からスペースやページを作成し、リンクできるため生産性の向上が可能 |
|
優れた生成AI機能 |
生成AI機能では、契約者の権限情報に限定して生成AIが参照 契約したプラットフォーム全体、限定されたスペース、特定ページのみ、添付ファイルのみなど生成AIが参照する範囲を制限できるためハルシネーションを抑えることが可能 |
|
ストレージ無制限 |
ONES製品は、すべてのプランがストレージ無制限 ストレージ容量が起因のプラン変更は不要 ユーザーが求める機能によりプランを選択 |
おわりに
株式会社システムコンシェルジュでは、生成AIで実現する「成果の出る」ナレッジ管理の方法とは ~いままでのナレッジ管理に成果を感じない理由と解決策~というセミナーを開催し、すべてのセミナーが満席となっています。
このセミナーの資料を無料公開しておりますのでご活用ください。
さまざまな組織の課題を解決する資料を無料公開
株式会社システムコンシェルジュでは、さまざまな社会や組織の課題を解決する方法論や仕組み化を説明した資料や必要なITツールを紹介する資料を無料公開しています。
資料ダウンロードページへ移動



