• 特集記事

放置された成功や失敗の脅威(リスク)を防止する「ふりかえり」の仕組みとは

  • 著者 : INNOVATION WORLD 編集部
  • 24.05.08
  • SHARE
  • line

「振り返り」がイノベーションに必要な理由

多くの組織での人事評価制度は減点方式であり、失敗した際の原因追求と是正措置の検討と報告を個人に委ねられるケースがあります。このため、失敗することが個人に大きな負担と脅威となり、挑戦を避けたり、失敗を隠したりする可能性が高くなってしまいます。

現在の人事評価制度では、失敗をマイナスと見なし、成功をプラスとし賞賛するため、挑戦することや、挑戦によって得られた学びの経験が蓄積されにくいのが実情です。

継続的な成長を促す組織では、挑戦と学びを包括的に評価し、経験を共有することで、失敗を受け入れ、組織全体でのリスク回避を可能にする組織文化の形成が求められています。その形成に必要な要素の一つとして、失敗や成功に対する「振り返り」という制度の導入が必要になります。この記事では、そのような制度の重要性とメリットについて解説します。


現代の人事評価システムの問題点

減点主義の人事評価の弊害

多くの組織の人事評価制度では、従業員の評価に対して減点主義で行われているのが実情です。この制度では、失敗によってマイナス評価となってしまうため、従業員はリスクを避けるようになり、新しい方法や新しいアイデアや手法を試すことを恐れ、以前からやっている方法やマニュアルやルールに従った仕事を中心に考えるようになります。このような環境は、創造性とイノベーションの抑制につながり、組織の成長を妨げる可能性があります。


挑戦の重要性とその阻害要因

新たな挑戦への躊躇

リスクを伴う新しい挑戦から避ける傾向は、従業員がスキルアップやキャリア進展の機会を逃すことにつながります。挑戦を通じてのみ得られる経験と学びは、個人の成長だけでなく、組織の革新にも不可欠です。

成功重視の文化の限界

成功のみが賞賛と報酬を受ける組織文化では、真の成功の背後にあるプロセスや学びが見過ごされがちです。本来であれば成功した背景には、市場や社会情勢、競合他社の対応、営業方法など、多面的に成功分析をしなければならないですが、「皆さんの指導のおかげ」「運がよかった」など個人が感じた抽象的な美しい言葉はあっても、成功に至った真の成功要因への追及が行われることはほとんどありません。そして失敗した際は「誰の責任なのか」と犯人探しと個人への責任追及が行われ、組織や仕組みの脆弱性、人事評価や人事教育の課題が明らかになることはほとんどありません。成功も失敗も個人だけでなく組織としても価値のある経験として捉え、両方から学ぶことの重要性を認識することが必要です。


「振り返り」制度の導入

振り返りの定義と目的

振り返りは、プロジェクトやタスクの結果を評価し、そのプロセスを理解し改善点を見つけ出すための手法です。このプラクティスを通じて、組織は失敗から学び、成功を再現する方法を探ります。

世界中の振り返りフレームワーク

世界各国で採用されている振り返りフレームワークには様々なものがあり、それぞれに特徴がありますが、共通しているのは全員が学び、成長する機会を提供することです。

振り返りのフレームワークについては、過去記事「リモートワークを推進するとイノベーション活動が活性化される理由」の「評価・分析・振り返り」にも紹介しております

フレームワーク名

説明

Starfish

活動を「もっとする(Start Doing)」「続ける(Keep Doing)」「少なくする(Do Less)」「やめる(Stop Doing)」「増やす(Do More)」の5つの領域に分類します。チームパフォーマンスにどのような影響を与えたかを評価するために使用されます。

4L (Liked, Learned, Lacked, Longed For)

「好きだったこと(Liked)」「学んだこと(Learned)」「不足していたこと(Lacked)」「望んだこと(Longed For)」の4つの領域に焦点を当てます。ポジティブな側面と改善の余地をバランス良く振り返ります。

Sailboat

セイルボートの比喩を用いて、目標に向かって進むための推進力と障害物を特定します。チームが現在の位置と進むべき方向を理解するのに役立ちます。

Mad, Sad, Glad

プロジェクト中にメンバーが感じた「怒り(Mad)」「悲しみ(Sad)」「喜び(Glad)」の感情に基づいて振り返ります。チームの絆を深め、仕事の感情的影響を明らかにします。

KPT (Keep, Problem, Try)

「続けるべき良い実践(Keep)」「遭遇した問題(Problem)」「試みるべき新しいこと(Try)」の3つのカテゴリーに基づいて構成されます。問題に対処し、革新を促進するバランスの取れたアプローチを提案します。


イノベーションの仕組みを「振り返り」の仕組みに

イノベーションの仕組みは入手した「情報やアイデア」「実行可能なビジネスプラン」にしていきます。同じように成功と失敗の情報から活用可能なナレッジとしていくこともイノベーション仕組みで実現可能となります。
このプロセス過程において前述の振り返りのフレームワークを利用すると体系化された仕組みが構築できます。


振り返りによる学びとその組織への影響

失敗からの学びと経験の共有

失敗を通じて得られる教訓は、個人だけでなく、組織全体の貴重な財産です。これらの教訓を蓄積・共有することで、同じ過ちを繰り返さないようにすると同時に、将来的にはより効果的な戦略を立てることが可能になります。

成功と失敗の逆アセンブル

成功したプロジェクトやタスクも、失敗したものと同様に詳細に分析することで、何がうまくいったのか、どの要素が重要だったのかを理解することができます。この知識は、将来のプロジェクトに活かすことができます。


組織文化の転換と振り返りの組み込み

失敗を奨励する文化の形成

失敗を許容し、それを学びの機会として捉える文化を形成することで、従業員はより大胆な挑戦を試みることができるようになります。これは組織の全体的な革新と成長を促進します。

振り返りに基づく人事評価の改革

近年では、人的資本への戦略が経営やビジネスを大きく左右する重要な戦略であると考えられています。その人事戦略の一部として振り返りを人事評価に組み込むことで、個人が取り組んだ挑戦とそのプロセスを評価の対象とします。これにより、結果だけでなく、努力と学びも正当に評価されるようになります。


挑戦を促進する組織の未来

プロセス重視の評価への移行

挑戦のプロセスや人的力量に注目した組織文化を形成することで、従業員は成果を出すためのさまざまな方法を試す機会を得ることができます。誰もが得手・不得手があるため、ある人にとっては簡単なことが、別の人にとっては挑戦になることもあります。人的力量を把握し、挑戦を促し、支援体制を構築することは、ISO 56002(イノベーション・マネジメントシステム)に定められたガイドラインに則っています。このような人事評価は持続可能な成長と継続的なイノベーションを促進します。

持続可能な成長への道

挑戦と学びを組織文化の中心に据えることで、企業は長期的に競争力を保ちながら成長を続けることができ、このような組織文化は、将来にわたって企業が繁栄する基盤を築きます。
多くの経営陣や管理職は、これらの課題も解決策も頭では理解していながらも、現在の経営システムを大きく変えることの影響に不安を抱えることと思います。その不安を取り除くために数多くの成功例をベストプラクティス化したISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)やイノベーション管理ツール『IdeaScale』などが市場には提供されています。

社会情勢は大きな課題を抱え、急激に変化するビジネス世界において何もしない脅威(リスク)を考えれば、変わるための行動をした方が有益な投資活動といえます。

  • SHARE
  • line

この記事の監修者

INNOVATION WORLD 編集部

株式会社システムコンシェルジュが運営するオウンドメディア「イノベーションワールド」の編集チームです。皆さまのお困りごとを解決する私たちの取り組みなどをご案内いたします。

  • twitter
  • instagram
  • facebook

Related Post関連記事

  • 特集記事

持続可能な成長を支えるイノベーションとインターナルコントロール(内部統制)の役割

イノベーションとインターナルコントロール(内部統制)の役割と相互作用について探ります。特に、ISO 56001規格に基づき、企業がリスクを管理しながらも持続可能な成長をどのように遂げるかを詳細に解説しています。イノベーションを促進しつつ、適切なガバナンスとリスク管理を確保する方法に焦点を当てており、実用的な内部統制の枠組みの重要性についても考察しています。

INNOVATION WORLD 編集部

持続可能な成長を支えるイノベーションとインターナルコントロール(内部統制)の役割
  • 特集記事

イノベーションリーダーにコンセプチュアルスキルが重要な理由 ―複雑性と変化の時代に求められる戦略的抽象思考力―

急速な技術革新と市場変化の中、イノベーションリーダーに求められるのは単なる実行力ではなく、「問いを立て、未来を構想する力」です。本記事では、その基盤となるコンセプチュアルスキルの定義と4つの要素、そして実践的な鍛え方を解説し、変化を創り出す知の力を磨くヒントをお届けします。

INNOVATION WORLD 編集部

イノベーションリーダーにコンセプチュアルスキルが重要な理由 ―複雑性と変化の時代に求められる戦略的抽象思考力―
攻めの変革力
  • 特集記事

DX時代に求められる情報システム部門の“攻めの変革力”とは

DXや生成AIの普及が加速する今、情報システム部門にはこれまでの“守り”の役割だけでなく、経営の変革をリードする「攻め」の力が求められています。本記事では、企業が競争力を高めるために情シスが果たすべき8つの新たな役割や、全社的なDX推進体制のつくり方について、最新トレンドや実践的視点から解説します。

INNOVATION WORLD 編集部

DX時代に求められる情報システム部門の“攻めの変革力”とは
2023年「リソース管理」が重要になっている理由とは
  • 特集記事

2023年「リソース管理」が重要になっている理由とは

リソース管理の主要なコンポーネントを理解し、ベスト プラクティスを採用し、適切なツールとテクノロジーを活用することで、組織は課題を克服し、リソースの価値を最大化できます。本記事では各要素について解説します。

INNOVATION WORLD 編集部

2023年「リソース管理」が重要になっている理由とは
組み替え可能なブロック
  • 特集記事

ビジネスコンポーザビリティ:変化に強い企業をつくるイノベーション戦略

企業が持続的に成長するためには「柔軟に再構成できる組織」が必要です。この記事では、Gartnerの「ビジネス・コンポーザビリティ」概念を中心に、変化に強い企業を実現するための戦略と実践ステップを解説。ISO 56001 / 56002との関係や、AmazonやMicrosoftの事例、日本企業の課題とその解決方法を示しています。変化をチャンスに変える組織づくりのヒントを提供しています。

INNOVATION WORLD 編集部

ビジネスコンポーザビリティ:変化に強い企業をつくるイノベーション戦略
innovation-1
  • 特集記事

創造性(クリエイティブ)と革新性(イノベーション)の本質的な違いとは?

創造性(クリエイティブ)と革新性(イノベーション)の違いを解説します。創造性は新しいアイデアを思いつくこと、一方でイノベーションはそれを具現化して価値を生み出すことです。これらの違いを理解することで、企業や個人は競争の激しい市場での優位性を保つための戦略を練ることができます。

INNOVATION WORLD 編集部

創造性(クリエイティブ)と革新性(イノベーション)の本質的な違いとは?

Recent Posts新着記事

  • イベント・セミナー

3月10日セミナー開催|【中小企業経営者向け】自社のイノベーション文化、根づいていますか? ~ 挑戦を後押ししている“つもり”になっていないか。組織が変わらない“本当の理由”を特定する ~

3月10日セミナー開催|イノベーション組織の成熟度を定量的に診断する「イノベーション組織サーベイ」を紹介します。イノベーションを阻害している要因はどこにあるのかを構造的に可視化し、自社の現在地を客観的に把握。感覚や経験則に頼らず、データに基づいて組織課題を整理し、取るべき次の一手を検討するための視点を提示します。

INNOVATION WORLD 編集部

3月10日セミナー開催|【中小企業経営者向け】自社のイノベーション文化、根づいていますか? ~ 挑戦を後押ししている“つもり”になっていないか。組織が変わらない“本当の理由”を特定する ~
  • 特集記事

個人の力量を“組織の成果”に変える:ISO56001でつくる変革のマネジメントシステム

組織変革を進める際、「人を育てる」「意識を変える」といった施策に偏ってしまうケースは少なくありません。しかし、個人の力量に依存したままでは、成果は安定せず、組織としての成長にも限界があります。組織を本質的に変えるために必要なのは、成果が生まれる前提となる「仕組み」の設計です。本記事では、ISO56001(イノベーション・マネジメントシステム)を軸に、個人の力を組織の成果へと転換するために、経営がどのようなマネジメントの設計を行うべきかを整理し、実践の方向性を解説します。

INNOVATION WORLD 編集部

個人の力量を“組織の成果”に変える:ISO56001でつくる変革のマネジメントシステム
  • 特集記事

ISO 56001(イノベーション・マネジメントシステム):規模別の効能

イノベーションは、もはや個人のひらめきや偶発的な成功に委ねるものではありません。企業が不確実性の高い環境下で成長を続けるためには、挑戦と学習を組織的に回し、再現性あるイノベーションを生み出す「経営能力」として確立することが求められます。ISO56001(イノベーション・マネジメントシステム)は、そのための国際的な枠組みです。本記事では、企業規模ごとに異なる経営課題を踏まえながら、ISO56001がどのように意思決定力や資源配分、学習の仕組みに作用し、イノベーションの質と成功確率を高めるのかを解説します。

INNOVATION WORLD 編集部

ISO 56001(イノベーション・マネジメントシステム):規模別の効能
  • イベント・セミナー

【開催終了】2月17日セミナー|イノベーションを仕組みにする!ISO56001 実践マスター講座(無料)

【開催終了】2月17日|「イノベーションを仕組みにする!ISO56001 実践マスター講座(無料)」。ISO56001(イノベーション・マネジメントシステム)の基礎から、その効果、組織へ導入するための手順や注意点までを具体的に紹介します。イノベーションを偶然ではなく“仕組み”で継続的に生み出したい企業様はぜひご参加ください。

INNOVATION WORLD 編集部

【開催終了】2月17日セミナー|イノベーションを仕組みにする!ISO56001 実践マスター講座(無料)
  • 特集記事

イノベーションの成功率と質を向上させる『バイアスの是正』という経営課題

イノベーションの失敗は、アイデア不足ではなく「判断の歪み」から生じることが少なくありません。確証バイアスや成功体験への過度な依存など、無意識のバイアスは意思決定の質を下げ、成功率を大きく左右します。本記事では、イノベーションの成功率と質を同時に高めるために必要なバイアス是正の考え方を整理し、ISO56001を軸に組織として再現性ある仕組みへ落とし込む方法を解説します。

INNOVATION WORLD 編集部

イノベーションの成功率と質を向上させる『バイアスの是正』という経営課題
  • 特集記事

経営メッセージが届かない本当の理由と、ISO56001が示す“正しい伝達”の仕組み

経営陣は「わかりやすく伝えているつもり」でも、現場には意図や戦略が正しく届かず、行動につながらない。このギャップの背景には、個人の伝達力ではなく「知識の呪い」や財務偏重の組織構造といった根本的課題があります。本記事では、その構造的問題とリスクを解き明かし、ISO56001を活用した“伝わる経営”を実現する方法を紹介します。

INNOVATION WORLD 編集部

経営メッセージが届かない本当の理由と、ISO56001が示す“正しい伝達”の仕組み