概要
ここ数年で退職した社員と継続して交流を行う活動「アルムナイネットワーク」に取り組む企業が増えています。その背景には深刻な人材不足やビジネス機会の拡大、ビジネス基盤の強化、外部協力者の確保などがあります。かつては労働人口が増加傾向にあり、人材不足となっても採用募集すれば確保できるという状況でした。しかしながら、労働人口が減少傾向にあり、人材確保が困難になってきた現在において、自社の組織や文化を理解している元同僚たちが支援してくれる体制が築ければ、その企業にとっては大きなメリットになります。
アルムナイネットワークとは
アルムナイネットワークとは、何らかの理由で企業を退職した、もしくは定年退職したOB・OGの元従業員で形成されるコミュニティを指します。
かつて多くの企業では、このようなコミュニティを組織的に作ることはありませんでした。それどころか、退職者は「敵」や「裏切り者」などのレッテルを貼られ、交流や接触を禁じられたり、退職が決定した段階で部門異動や知識・能力研修を停止し、さらには報酬もカットされるなどの実例が少なくありませんでした。アルムナイネットワークは、この反対側に位置する活動と言えます。 アルムナイ(Alumni)は「卒業生」「同窓生」と訳され、以前は学校の卒業生のネットワークを指していました。野球やサッカーなどの強豪校では、その部活動の卒業生たちが活動を支援したり、指導を行ったりして後輩たちが成長し、強豪校へと至ります。企業においても、アルムナイネットワークは重要な役割を果たしています。
アルムナイネットワークに取り組む企業の例
多くの有名企業がアルムナイネットワークに取り組んでおり、今後も、この取り組みは拡大傾向となっています。
- 三菱電機株式会社
- KDDI株式会社
- 日本郵政株式会社
- 三井住友海上火災保険株式会社
- 株式会社IHI
- 横河電機株式会社
- TIS株式会社株式会社
- 日立ソリューションズ株式会社
- 株式会社 荏原製作所
とくに2022年からアルムナイネットワークに取り組んでいる三井住友海上火災保険株式会社の事例は注目すべき事例です。
アルムナイネットワークに取り組むメリット
多くの企業が取り組み始めているアルムナイネットワークには、様々なメリットがあります。
以下は、アルムナイネットワークの代表的なメリットです。
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ビジネス機会の拡大 |
アルムナイネットワークは、元従業員や現従業員との継続的な関係を築くことを可能にします。これにより、ビジネスのチャンスや協力関係が生まれる可能性があります。 |
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人的リソースと採用の強化 |
元従業員は、業界の経験と会社の文化を理解しているため、再雇用する際の優れた候補者になり得ます。また、元従業員の持つ人脈も活用でき、人的リソースの確保が容易になります。 |
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知識とスキルの共有 |
元従業員が新しい経験やスキルを共有することにより、企業は最新の業界動向や技術について学ぶことができます。 |
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ブランドと評判の向上 |
アルムナイネットワークは企業の評判を高めることに貢献します。元従業員が企業に対して肯定的な感情を持っていれば、それが外部に向けて良いイメージを伝えることになります。 |
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イノベーション活動への支援 |
元従業員たち(アルムナイ)は様々な業界や市場で活動しているため、彼らから得られる情報は市場動向や競合他社の洞察に役立ちます。 |
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従業員エンゲージメントの向上 |
現役の従業員にとって、アルムナイネットワークは会社への帰属意識を高め、エンゲージメントを強化する要素となります。 |
イノベーションにアルムナイネットワークが効果的な理由
元従業員たち(アルムナイ)は、組織外の情報を持っています。市場や業界がどのような状況にあるのかをネットワークを通じて知ることができます。オープンイノベーション活動では外部協力者の存在が不可欠ですが、親身になって考えてくれる外部協力者を見つけるのは困難です。ビジネスライクな外部協力者は自分たちへの見返りがなければ、いずれ離れてしまいますし、そもそも目指す方向や会社の理念が異なるため、同じ方向を向いた協力者とはいえません。アルムナイネットワークの場合は、そのような結果になる可能性が低いです。 このようなアルムナイネットワークは、イノベーション活動にも大きな効果をもたらします。
ISO 56002(イノベーション・マネジメントシステム)では、アルムナイネットワークが効果をもたらす領域は以下の通りです。
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領域 |
説明 |
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組織の状況 |
元従業員たち(アルムナイ)は、外部組織に所属するため自社とは異なる視点や情報を持っています。内部組織だけの情報では判断できない場合もあり、外部組織の情報や観点はイノベーションを促すための大きなメリットとなります。 |
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支援体制 |
支援体制では、「知識」の部分で大きな効果を発揮します。経験豊富な人材の実践的な知識やナレッジ、経験を知ることは、イノベーション人材を育成するための大きな支援体制となります。 |
アルムナイネットワークを構築するために
アルムナイネットワークを構築するためには、元従業員が同意のうえで参加できるネットワーキングをITツールを用いて構築することが大切です。
以下は、その方法を紹介します。
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アルムナイ専用ツールを活用する |
アルムナイ専用サービスを用いてアルムナイネットワークを構築し、元従業員に案内してネットワークを形成します。 |
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イノベーション管理ツールを活用する |
オープンイノベーションに対応したユーザー無制限で利用可能なイノベーション管理ツール「IdeaScale」を活用します。利用規約への同意によりネットワークを形成し、現役従業員との情報交換やコミュニケーションにも活用できます。 |
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コミュニケーションツールを活用する |
Slack、Teams、Discord、LINEなどのコミュニケーションツールを活用して気軽にコミュニケーションができるネットワークを構築します。 |
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メタバースを活用する |
メタバース空間で相談やコミュニケーションができる場を提供します。 |
ITツールの活用に加え、定期的な交流会を開催することも効果的です。重要なのはアルムナイネットワークへの情報共有とコミュニケーションを絶やさないことです。学校法人でも、定期的に卒業生の同窓会を開催したり、同窓会新聞で現在の学校の情報を共有するなど、関係を継続する活動が行われています。企業においてもこれは必要な活動と言えます。そのためにはITツールの活用が大きなメリットとなります。
おわりに
退職希望者や退職者に対して経営陣や管理職が心無い対応をすることは、その組織において多くのデメリットを生み出します。大切なことは、良好な関係を継続させることが大きなメリットにもつながるということです。イノベーション活動では、外部協力者が多ければ多いほどイノベーションを起こしやすくなります。そのため、多くのイノベーション企業ではアルムナイネットワークの構築に取り組み始めています。
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