• 特集記事

イノベーション組織とは ~経営と現場との乖離(ミスマッチ)を取り除く~

  • 著者 : INNOVATION WORLD 編集部
  • 23.08.11

私たちは以前、「ビジネスが成長する過程で組織が直面する問題点」について話しました。特に、組織が「創業期」から「成長期」へと進む際によく見られる誤解とそれに対する解決策について今回は詳しく説明します。

多くの創業者は、自分の考えと行動によってビジネスを成長させる原動力となります。これらの人々は、新たなアイデアを生み出し実行できる素晴らしい能力と経験を持っています。しかしながら、どんなに優れた経営者でも、自分一人で全てを理解し、対応することは不可能です。自分の視野や行動量には限界があります。

それによって、組織が成長すると、経営者が把握できる視野も変わってきます。この点について、より詳しく見ていきましょう。

組織の成長によって変化する視野

創業時から一緒に働いている従業員たちは、経営者が市場の動きや顧客の要望、社員の能力、競争相手の動き、取引先の強みなどを理解し、それを元にビジネスを立ち上げ、運営してきた様子を目の当たりにしてきたでしょう。経営者はチームの指導者として、一緒に働く人々とともにビジネスを進めてきたし、その結果として組織も成長してきたと言えます。

組織が大きくなっても、これまで通りに経営者の指示に従って行動すれば、引き続き成長できると考える人もいるでしょう。

一方で、経営者自身も、以前は全てを把握できていた状態が変わり、全てを理解することが難しくなるという事実を受け入れたくない、またはそのような状況が起こること自体を想像できないかもしれません。

視野に対する理想と現実

従業員から次のような発言があった場合、もしかしたら視野に対する勘違いが発生しているのかもしれません。

「お客さまのことを本当に考えてますか?」

「お客さまが求めているものが理解できてます?」

「従業員の状況がわかってますか?」

このような発言があったとしたら、視野に対する理想と現実を理解する必要があるのかもしれません。

従業員や経営側が求める理想は図.1(経営者や従業員が求める理想的な視野)ですが、実際は、図.2(組織の成長によって変化する現実的な視野)の視野といえます。

図.1 経営者や従業員が求める理想的な視野

図.2 組織の成長によって変化する現実的な視野

つまり、ひとりの人間が把握できる視野には限界があるため、ビジネスの成長に比例して組織の規模も拡大してしまうと、すべてを把握することが難しくなります。

この変化に気づかず放置した場合、従業員から経営者や上級管理職への経営批判やマネージメント批判が起こり始めるでしょう。

問題はマネージメントやルールが曖昧なこと

これらの問題は、経営者や上級管理職のスキル不足や、現場への理解不足から起きているわけではありません。問題の根本原因は、適切なシステムやルールが存在しないことです。この重要な事実に気づかず、経営者や上級管理職、そして従業員が「図2」のような誤った視野に基づいて理想を追い求めることで、不満が生じ、生産性が下がり、従業員のモチベーションも低下してしまいます。

このような誤解を生む原因を解消するためには、仕組みを整備することが重要です。

「ビジネス成長過程で組織に発生する障壁とは」の記事でもこの点を説明していますので、そちらもぜひ参照してみてください。

誤解を取り除く仕組み化について

その仕組み化には、以下のような取り決めが必要になります。

  • ミッション・ビジョン・バリューの浸透
  • 権限の委譲
  • 部門および個人に対する業務・役割の明確化
  • コミュニケーション
  • 規則・ルールの遵守(マネージメント)
  • 人材の教育

本記事では、これらの取り決めについて簡単に説明をさせていただきますが、ISO56000シリーズ(イノベーション・マネージメントシステム)では必要な要素として説明されております。

ミッション・ビジョン・バリューおよび目標の浸透

創業当初は少人数のため共有できたミッション・ビジョン・バリューや目標も、組織が成長し、新しい従業員が増えてくると、それぞれが経験した価値観によって判断と決定、行動が行なわれ、個人事業主の集合体のような感覚になってしまうことがあります。

組織として目的意識を共通化し、言語化することで価値観が統一され、コミュニケーションロス(認識のズレ)が大幅に削減されるようになります。

権限の委譲

権限の委譲は、ビジネスの柔軟性と俊敏性を高め、個人にも自己判断や自律的な行動を促すことができます。しかし、権限を委譲しても行動が変わらないという問題が生じることがあります。

その理由は、権限を委譲したつもりでも相手がそのように受け取っていないというコミュニケーションロス(認識のズレ)が一つの原因です。

役職や役割を与えたからといって、自動的に権限が委譲されたと思い込む傾向がありますが、相手がどのような行動をすべきかやどこまで判断できる権限があるのかといった曖昧な部分が存在した場合、結果的に自分自身で判断できずに上司に相談することになり、生産性が向上しない結果になる場合があります。

役割と権限を明確に説明し、権限を委譲したことを宣言することで、コミュニケーションロス(認識のズレ)が改善します。

部門および個人に対する業務・役割の明確化

前述の「権限の委譲」の課題を解決するためには役割や権限を業務記述書などを作成して明文化する必要があります。明文化した内容を担当者に説明をすることで生産性を向上させることができます。

この行いをせずに、一緒に働いてきたのだから、当然ながら理解しているだろう、わかるだろうという判断は、結果的にコミュニケーションロス(認識のズレ)が生まれ、生産性を低下してしまう恐れがあります。

この項目は、「権限委譲」に相互に関連する項目となります。

コミュニケーション

この項目では、SlackやTeams、メールなどのコミュニケーションツールについてということではありません。伝え方と伝えた内容へのコミットメントという意味として捉えてください。

現在のプロセスから次のプロセスへ移るときには、情報伝達などの決めごとが必要になります。

伝達された情報の粒度や内容に齟齬がある場合、次のプロセスを担当するメンバーや個人がタスクとして認識しないという誤解が生じます。このような事態に陥らないためには、ONES ProjectやAsana、Notion、Trelloのようなチケット駆動型のタスク管理ツールに依頼として記入したり、Microsoft Wordなどで作成した公式な文書で正式に依頼するなど、伝え方のルールを明確にすることで、コミュニケーションロス(認識のズレ)は大幅に軽減されます。

規則・ルールの遵守(マネージメント)

各項目で述べた、権限・役割、ルールなどを公式に文書化し、関係者に告知し認知させることが大切です。そして決定したルールは社長を含めた全従業員が必ず遵守させることが大切です。

もしルールに無理があり、改善要望などがあった場合は、正式な手続きにそって改善要望として提言することもマネージメント側の責任になります。

人材の教育

業務記述書や目標管理シートなどを作成して、組織が求める能力や成果指標が明確になったとしても、それを達成するための指導を怠ってはいけません。

組織やビジネスの中心は「人」であり、人が成長するためには、教育と経験を得るための時間を確保することが重要な要素です。

たとえば、「デザイン思考」や「リーン思考」といった研修を受けたとしても、業務はマニュアルやルールに従って厳密に行われる限り、得た知識が経験に変わることはありません。

例として、3Mの15%ルールが有名な活動です。

15%カルチャーで社会貢献を | Diversity & Inclusion | Working at 3M/3Mで働くということ | 3M Careers/キャリア | 3M (3mcompany.jp)

この項目では、組織のミッション・ビジョン・バリューおよび目標に合わせた教育と経験を得るための時間を確保することが求められます。


まとめ

ここまで述べた内容は、ISO56002(イノベーション・マネージメントシステム)でガイドラインとして記載している内容と同意となります。そのため組織のライフサイクルのすべての段階においてISO56002の要素は活用できるものとなっています。

ISO56002については、ビジネスのアジリティを最速化するイノベーション・マネジメント(ISO56002)とは をご参照ください。

システムコンシェルジュへ相談

コンシェルジュに相談する

システムコンシェルジュとは
株式会社システムコンシェルジュには、業務知識やIT技術知識、市場の製品知識など、多岐にわたる知識と経験を持つメンバーがいます。これらのメンバーはITを活用して業務改革を支援することができます。お客さまの問題や悩みをお聞きし、解決策を提案する役割を果たしています。

  • SHARE
  • line

この記事の監修者

INNOVATION WORLD 編集部

株式会社システムコンシェルジュが運営するオウンドメディア「イノベーションワールド」の編集チームです。皆さまのお困りごとを解決する私たちの取り組みなどをご案内いたします。

  • twitter
  • instagram
  • facebook

Related Post関連記事

  • 特集記事

イノベーションチームに優先順位付けフレームワークが必要な理由

組織がイノベーションを目指す際に、膨大な情報やアイデアから正しいものを抜き出し、優先順位付けを行うために何をすればよいのか?それにはいくつかの方法論があります。そしてなぜチームがそれを使うべきなのかについて解説します。

INNOVATION WORLD 編集部

イノベーションチームに優先順位付けフレームワークが必要な理由
CoE(Center of Excellence)の実現に必要なイノベーションの要素
  • 特集記事

CoE(Center of Excellence)の実現に必要なイノベーションの要素

近年、注目されるCoE(Center of Excellence)にはイノベーションの仕組みが必要不可欠である理由を説明します。優秀な人材の知識・経験、ナレッジ、アイデアなどを収集・蓄積し、人事評価を行うだけでなく組織が保有する知財として活用することで事業や業務の生産性が向上します。

INNOVATION WORLD 編集部

CoE(Center of Excellence)の実現に必要なイノベーションの要素
  • 特集記事

イノベーションとリスキリング:変革の時代に求められるスキルの再構築

イノベーションにおけるリスキリングの重要性に焦点を当て、技術革新の時代に企業が直面するスキルのミスマッチをどのように解消するかを探ります。効果的なリスキリング戦略を通じて、企業が持続可能な成長を達成し、競争力を維持するための具体的な方法について提案します。また、変化に対応するための組織と従業員のスキルアップデートの重要性についても紹介します。

INNOVATION WORLD 編集部

イノベーションとリスキリング:変革の時代に求められるスキルの再構築
  • 特集記事

オープンソースライセンスの思想から考える、共創型イノベーションのあり方 〜「無料で使う」から「共に価値を創る」へ、日本企業に求められるOSS観の転換〜

OSSの価値は、コスト削減だけではありません。本記事では、オープンソースライセンスの思想をもとに、OSSを「無料で使うもの」ではなく、共に育てる価値基盤として捉える考え方を解説します。日本企業に求められるOSS観の転換、OSPOやOSS戦略の重要性、オープンイノベーションにつなげるための視点を紹介します。

INNOVATION WORLD 編集部

オープンソースライセンスの思想から考える、共創型イノベーションのあり方 〜「無料で使う」から「共に価値を創る」へ、日本企業に求められるOSS観の転換〜
プロジェクト管理の課題
  • 特集記事

プロジェクト管理の課題を解決するには?

プロジェクト管理では、プロジェクトの遅延、コストの超過、ビジネス要件を満たすためのツールの制限、ソフトウェアの品質の低下などの多くの課題があります。本記事では、それらの課題を解決する案をご紹介します。

INNOVATION WORLD 編集部

プロジェクト管理の課題を解決するには?
エンゲージメント強化でビジネスを加速 ~イノベーションを促進する従業員のアイデア
  • 特集記事

エンゲージメント強化でビジネスを加速 ~イノベーションを促進する従業員のアイデア

従業員のエンゲージメントを高めることがイノベーションを起こす近道となります。この記事では従業員エンゲージメントと従業員が生み出したアイデアがビジネスに与える影響を具体的にご紹介します。

INNOVATION WORLD 編集部

エンゲージメント強化でビジネスを加速 ~イノベーションを促進する従業員のアイデア

Recent Posts新着記事

  • イベント・セミナー

11月 17日セミナー開催|DX部門・情報システム部門が知っておきたい、生成AI時代のプロジェクト管理改革

11月17日セミナー開催|生成AIを「使う」から、AIと「働く」へ。プロジェクト管理とナレッジ管理を横断してAIを活用し、必要な情報を参照しながらAIが業務を支援・実行。人間は重要な判断や確認に集中する、新しいプロジェクト管理・開発のあり方をデモンストレーションを交えてご紹介します。

INNOVATION WORLD 編集部

11月 17日セミナー開催|DX部門・情報システム部門が知っておきたい、生成AI時代のプロジェクト管理改革
  • 特集記事

PoCまでは進むのに、なぜ事業にならないのか ―― 原因は「PoCの先」を動かす経営の仕組みにあった

PoCまでは進むのに、なぜ事業化につながらないのか。本記事では、原因を現場や技術の問題だけに求めず、評価基準、資源配分、意思決定、既存事業との調整など、PoCの先で必要となる経営の仕組みから整理します。さらに、PoCを事業化・価値実現へつなげるために、経営が設計すべき考え方を解説します。

INNOVATION WORLD 編集部

PoCまでは進むのに、なぜ事業にならないのか ―― 原因は「PoCの先」を動かす経営の仕組みにあった
  • 特集記事

事業の寿命が縮む時代、企業は何を変えるべきか ――「事業を運営する組織」から「事業を変化させる組織」へ

一つの成功モデルが通用する期間が短くなる中、企業には既存事業を安定して運営する力に加えて、環境の変化に応じて事業を更新する力が求められます。本記事では、中小企業の「余白不足」、大企業の「組織の重さ」という課題を整理し、ISO 56001をもとに、変化を捉え、計画し、実行・評価・改善するための仕組みを紹介します。

INNOVATION WORLD 編集部

事業の寿命が縮む時代、企業は何を変えるべきか ――「事業を運営する組織」から「事業を変化させる組織」へ
  • イベント・セミナー

10月6日セミナー開催|ここでしか学べない! ISO56001のリアル実践 ノウハウ公開セミナー

10月6日セミナー開催|ISO 56001の実践でつまずきやすい、戦略・方針を目標、活動計画、ポートフォリオへ落とし込む具体的な方法を解説。さらに、大企業から中小規模の組織まで、規模に応じたイノベーションの進め方も紹介。ISO 56001を学ぶだけでなく、実際の活動につなげたい方におすすめの内容です。

INNOVATION WORLD 編集部

10月6日セミナー開催|ここでしか学べない! ISO56001のリアル実践 ノウハウ公開セミナー
  • 特集記事

いまこそ求められる「新しいECM」――AI時代、日本企業の競争力を左右する「企業知識の統合」

生成AIの活用が進む一方、企業内に分散した情報や知識の品質が新たな課題となっています。本記事では、ECMを単なる文書管理ではなく「企業知識基盤」として捉え直し、情報・知識を統合してAIが活用できる状態を整え、ナレッジ管理やイノベーション・マネジメントを通じて価値創出につなげる考え方を紹介します。

INNOVATION WORLD 編集部

いまこそ求められる「新しいECM」――AI時代、日本企業の競争力を左右する「企業知識の統合」
  • イベント・セミナー

2026年9月11日|「Developers Summit 2026 FUKUOKA」出展のご案内

2026年9月11日|Developers Summit 2026 FUKUOKAに出展します。生成AIにより、プロジェクト情報とナレッジを一気通貫で整理・活用できる「ONES製品」をご紹介します。開発現場に散在する仕様書、議事録、ノウハウ、タスク情報を横断的に検索・活用することで、情報分散や属人化を解消。開発生産性の向上と継続的な知見共有を実現するための活用方法を展示ブースでご紹介します。

INNOVATION WORLD 編集部

2026年9月11日|「Developers Summit 2026 FUKUOKA」出展のご案内