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なぜ今、投資家はイノベーション企業を選ぶのか 〜 質と持続性を重視した最新動向 〜

  • 著者 : INNOVATION WORLD 編集部
  • 25.08.04
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投資家の評価軸は「量」から「持続的価値創出」へ

これまで、投資家が企業を評価する際の基準は、売上や利益の成長率、研究開発や設備投資にどれだけの金額を投じたかといった「量的な指標」が中心でした。しかし、経済や技術の変化が加速し、気候変動やサステナビリティへの社会的要請が高まる現代では、投資家の視点は大きく変わってきています。

PwCが行った世界43地域・投資プロフェッショナル227名を対象に行った調査(グローバル投資家意識調査2022)では、企業に期待する優先事項として投資家の83%が革新性を挙げ、温室効果ガス削減(69%)やデータセキュリティ(67%)を上回る結果となりました。投資家は、短期的な利益や規模の拡大よりも、外部環境の変化を機会に変え、持続的に成長できるイノベーション体質の企業を重視しています。


投資家が求める3つの条件

(1) 持続的成長を可能にする「イノベーション体質」

市場や技術の変化が急速に進む中で、投資家は、安定的な収益を維持するだけでなく、変化を捉え成長の糧とできるイノベーション企業を支持します。伊藤レポートは、過去20年間の厳しい環境下でも高いパフォーマンスを維持した日本企業に共通する特徴として、以下を挙げています。

  1. 顧客に独自の価値を提供し、価格決定力を確保する差別化戦略
  2. 事業ポートフォリオの最適化と独自ポジションの確立
  3. オープンイノベーションを含む継続的な新規事業開発
  4. 経営革新への積極的な取り組みと変化を恐れないイノベーション文化

一方で、日本企業の中には、ホームページやIR資料で「イノベーションに取り組んでいる」とアピールしながら、実際には具体的な取り組みや成果を公表していないケースが散見されます。従業員からも「社内は何も変わっていない」という声が上がり、外部の投資家や内部の人材双方に疑念を抱かせる事態を招いているケースがあります。

さらに、「研究開発費を上積みすれば投資家が評価するだろう」という発想が根強くありますが、投資家は投資額の多寡ではなく、その結果として何が生まれ、どのように収益や競争優位に結びついたのかを重視しています。単なる支出の増加では、無駄遣いをしている企業と認識されることもあり、投資家の信頼は得ることができません。


(2) 投資対効果の「質」と「成果」の明確化

現代の投資家は、企業の投資額そのものよりも、それが生み出す具体的な価値や持続的な成果を重視します。

評価されるポイントは、以下の通りです。

  • 投資が開拓した新市場や新たな収益源
  • 利益率やブランド価値を高める具体的成果
  • 模倣困難で長期的な競争優位を構築しているか

WiCiシンポジウムでのアクティブ投資家の声でも、「表面的なデータやスコアだけでなく、経営者のビジョンや情熱、企業文化、独自性を対話を通じて確認すること」が重要とされています。
単なる「取り組んでいる」という姿勢の表明ではなく、具体的な事例や数値目標を伴った成果報告が、信頼を得るために不可欠なのです。


(3) ESG・サステナビリティとの統合

PwC調査によると、投資家の60%が「企業の現在および将来の環境・社会への影響の開示」を求め、66%が「その金銭的価値の算定」も期待しています。サステナビリティは単なる社会的責務ではなく、規制回避・資本市場での評価・長期成長を左右する戦略要素と捉えられています。

また、調査結果では56%の投資家が「サステナビリティ施策で一時的に投資収益率が低下しても、長期的価値創造に繋がるなら許容する」と回答しており、長期志向の視点からESG対応を重視する姿勢がうかがえます。


日本企業の課題と信頼確保のための改善点

経済産業省の伊藤レポートでは、日本市場の課題として以下を指摘しています。

  • 日本企業の平均ROEは約5%で、株主資本コスト(6〜7%)を下回る企業が多数存在する。
  • 機関投資家のパッシブ運用偏重で、企業との対話や長期分析が不足している。
  • 四半期開示や短期的な業績変動への過剰な反応が、長期的な研究開発や新規事業投資を阻害している。

などの課題を挙げています。

それに加えて、「イノベーションの名ばかり発信」「成果の不透明さ」「研究開発費偏重」といった課題もあり、国内企業の信頼性を下げているのが実情です。
これらを是正し、投資家から支持を得るためには、実態と成果を伴った取り組みを明確にし、投資家との建設的対話を通じてコミットメントを示すことが必要です。
これは従業員からの信頼を得るためにはトップのコミットメントが重要という声を耳にしますが、投資家についても同じことが言えるのです。


投資家に信頼され選ばれるために

  1. イノベーションの体系化と成果の見える化
    ISO56001(イノベーション・マネジメントシステム)などを活用し、アイデア創出から事業化までのプロセスを仕組み化させ、単なる「取り組み」ではなく、何を実行し、どのような成果(売上・新市場開拓・社会的価値)を生んだのかを開示できるようにします。
  2. 研究開発費のみの発信から脱却
    投資額を示すだけではなく、その投資がどのように新たな競争優位や利益源を生み出したかを具体的に示す。ROIやROICなど、投資対効果を客観的に測る指標を投資家に提供できるようにします。
  3. 資本効率を意識した経営改革
    ROE・ROICといった国際的指標を経営の中心に据え、資本市場との共通言語を持つ。特にROE8%超を「グローバル投資家との対話の最低ライン」と位置づけ、中長期的な利益創出を目指す必要があります。
  4. 投資家との「協創」関係の構築
    経営陣が長期ビジョンやリスクテイクの意図を積極的に開示し、アクティブ投資家と質の高い対話を行う。WiCiシンポジウムで指摘されたように、「リスクを取らないことが最大のリスク」という認識を共有し、長期的な成長ストーリーを明確に描くことが重要です。
  5. 価値共創ガイダンス2.0の参考
    2022年8月に公開された「企業と投資家の対話のための「価値協創ガイダンス 2.0」 (価値協創のための統合的開示/対話ガイダンス2.0) 」は企業と投資家を繋ぐ「共通⾔語」であり、企業(企業経営者)にとっては、投資家に伝えるべき情報(経営理念やビジネスモデル、戦略、ガバナンス等)を体系的・統合的に整理し、情報開⽰や投資家との対話の質を⾼めるための⼿引となります。このような基礎情報を参照してIR資料を作成することが望ましいといえます。

投資家は「本当に未来を創る企業」を探している

投資家が求めているのは、単なる高収益企業や表面的に「イノベーションをやっています」と掲げる企業ではありません。具体的な行動と成果で変化を起こし、社会と市場の変化を先取りしながら持続的に価値を創出する企業です。
すでにイノベーションに取り組む企業と取り組まない企業では時価総額に大きな差がでているという調査結果も公表されています(下図参照)

そのためには、企業は研究開発費の規模やスローガンだけでなく、実際の成果、資本効率、ESGへの対応を明確に示し、投資家と未来を共に創る関係を築くことが不可欠です。
こうした企業こそが、資本市場での信頼を獲得し、資金調達力や市場評価を大きく高めることができると思います。

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INNOVATION WORLD 編集部

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