ビジネス成長の過程で、多くの経営者が直面するさまざまな障壁があります。これらの障壁は、経営やマネジメントと従業員の間での勘違いが原因の一つです。
多くの勘違いは、仕組みや役割の明確化が不足していることによるものです。
組織が成長するにつれて、この勘違いはますます大きな問題になり得ます。従業員が退職したり、パフォーマンスが低下したりして、組織の状態が悪化することがあります。
成長を妨げる原因を取り除くためには、成長の過程で必要とされるルールやマニュアル化などの仕組みづくりが重要です。
組織のライフサイクルと障壁
この状況については、リチャード・L・ダフト氏の『組織の経営学』という本でも言及されています。この本では、「組織のライフサイクル」について詳しく説明されており、こちらのサイトにも説明がされておりますので、参考になるでしょう。
あなたの会社はどの段階?「組織のライフサイクルモデル」とは|アリババ株式会社 (alibaba.co.jp)
本記事では、ビジネス成長過程と障壁を図.1で表し、各過程の状態と発生しうる障壁について説明します。
(図.1)組織の成長過程と障壁
1.創業期
創業当初の少人数のメンバーで構成された組織は、共通の理念、目的、目標を持ち、ビジネスを進めています。社長を含む経営メンバーと従業員が直接的なコミュニケーションをとることで、意見や方針が共有され、意思決定が迅速に行われ、スピーディーなビジネス遂行が可能になっています。
組織規模:〜約50名
障壁1の状態と突破方法
最初の段階では大きな問題はありませんでしたが、従業員が30人を超える頃からビジネスの進行に問題が生じ始め、従業員からの不満も聞こえるようになります。その原因は、これまで社長を含めた経営メンバーとの直接的なコミュニケーションによって素早く対応できたことが、従業員の数が増えると、報告書や連絡事項、相談事項、そして問題解決に関わる案件などが増え、意思決定や判断、対応が素早く対応することが難しくなるというのが主な原因です。
これらの障壁を突破するには、ルールやプロセスなどの仕組みを整える必要がなります。
2.成長期
ビジネスのプロセスや判断基準などがルール化やマニュアル化され、組織内では各部門ごとに機能や役割が明確化される段階に入ります。これにより、社長や経営メンバーと従業員が直接的なコミュニケーションを行わなくても、ビジネスの進行が可能になり、結果として成果が上がるようになります。
組織規模:〜約100名
障壁2の状態と突破方法
この段階では、いくつかの障壁が生じます。1つ目の障壁は、本来は権限の委譲と役割・権限の明確化が必要ですが、社長や経営メンバーが部門責任者を兼任すると、彼らの意思決定が経営メンバーとしてなのか、それとも部門責任者としてなのかが曖昧になり、従業員側は混乱します。
2つ目の障壁は、従業員がこれまで社長や経営メンバーと直接的なコミュニケーションを取ってビジネスを進めていたが、部門に所属することで社長や経営メンバーとのコミュニケーションが間接的になるということです。その結果、従業員は自分の部門長の意見や指示に対して、社長や経営メンバーに報告する(=答え合わせ)を行うことが目立つようになります。
3つ目の障壁は、曖昧な目標設定や評価基準に対する不満です。最初の創業時には共有されていた理念、目的、目標が、従業員に十分に浸透しなくなり、解釈の違いによって部門方針や目標、個人目標が異なる方向に設定されてしまうようになります。
主な障壁として3つの例を説明しました。
この状態では組織としての活動がうまく成り立っておらず、生産性が向上せず、むしろ従業員の不満が増えていくことになります。
これらの障壁を突破するためには、以下のような取り組みが必要になります。
- 社長や経営メンバーは、マネージメント層以外の従業員と直接的なコミュニケーションを取ることを行わないようにします。これにより、意思決定の混乱や誤解を減らすことができます。
- 組織の運営方法やルールを徹底する必要があります。明確な役割と責任の定義、目標の共有、評価基準の明示など、組織内のルールを明確にし、従業員が一貫した方向性で働けるようにします。
- 社長や経営メンバーは、各部門の方針、目標が、組織全体の方針と目標を齟齬がないか確認する仕組みを作る必要があります。これにより、組織を横断した意思統一ができるようになります。
つまり、組織マネージメントの仕組みを作り上げることで組織運営がスムーズになり、障壁を突破することができます。
ただし、組織のマネージメントには、リーダーシップのコミットメントが非常に重要です。単に形式的なマネージメントシステムを作っても、期待した成果を得ることはできないことを忘れてはなりません。
3.安定期
ルール化やマニュアル化により、ビジネスの生産性が向上し、業務の遂行はマニュアルやルールに基づいて行われることで成果が出る仕組みが整っており、経営・マネージメント側は、従業員だけでビジネスを進める状態となり、株主や投資家などへの対応をはじめていく段階に入ります。
組織規模:〜約300名
障壁3の状態と突破方法
この段階では、部門のサイロ化が深刻な問題となり始めます。部門目標や個人目標を設定した評価制度で運営する場合、従業員の優先順位は、個人目標>部門目標>会社目標になりがちです。
その結果、他の部門からの支援要請を優先せずに無視することがあったり、支援要請に応えても評価されないことから、従業員たちの中に不満が生じることがあります。
さらに全体を俯瞰して最適な行動が考えられる優秀な人材が大量に離職しはじめるのも、この段階になります。
これらの障壁を突破するには、部門を横断し、全体を俯瞰的に考え、判断と決定が行える仕組みが必要になります。
※障壁2でも述べましたが、社長や経営メンバーがそれを行うことは逆戻りになってしまいますので注意ください。
4.黎明期
ルール化やマニュアル化によって業務の生産性は向上しましたが、経営環境やビジネス環境の変化に迅速に対応することが難しくなりました。また、経営環境やビジネス環境の全体像を正確に把握することも難しくなり、適切な意思決定を行うことが困難になっています。
※安定期でも同様の問題が生じることがあります。
組織規模:約300名以上
障壁4の状態と突破方法
この段階では、組織のマネージメントやプロセス、ルールなどの仕組みがうまく機能し、生産性やビジネスの拡大も進んでいます。しかし、ルールやマニュアルを遵守するあまり、考える機会が失われ、情報を入手しても問題と認識しないケースが発生します。これにより変化に対して柔軟かつ迅速に対応できなくなることがビジネス上の大きな問題となります。変化そのものに気づかない状況になれば、ビジネスを盲目的に進めてしまい、気づいた時には手遅れになることがあります。
気づいたとしても、チャンスやリスクの判断や改善策を考えて実行するまでの時間(=価値のリードタイム)が長ければ意味がありません。
これらの障壁を突破するには、経営メンバーや部門責任メンバー、現場メンバーが情報共有を行い、入手した情報から仮説をたて、チャンスとリスクや価値創造などを検証し実行するためのイノベーション活動が必要になります。
イノベーション活動の仕組みの導入には、ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)をベースに考えるのが効果的です。
※この障壁4は「2.成長期」「3.安定期」でも生じる場合があります。
まとめ
多くの企業は、前述のような課題に悩み、企業理念や方針の浸透方法、従業員エンゲージメントの向上、人材教育などの取り組みを行っていると思いますが、期待通りの成果を得られていないかもしれません。
これらの問題は相互に関連しており、一時しのぎのツール導入や教育制度、カタチだけの人事評価制度や1対1の面談などの実施をしても、逆に生産性の低下や従業員の不満増大など、深刻な状況に陥る可能性があります。
ツールや制度を導入するだけでは、まだ仕組みが整っているわけではありません。重要なのは、それらが機能し、運用され、継続できることです。
経営リーダーにとって重要な要素は、従業員が本業が忙しくなってやれなくなったり、人材不足でできなくなったりしないように、経営資源をコミットメントすることです。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、各段階での共通の解決策は、組織の情報収集とコミュニケーション、変化に気づくこと、仮説を立てて検証し、改善を実施するプロセスです。これらはISO 56002(イノベーション・マネジメントシステム)のイノベーション活動にも関連しています。
もし各段階の障壁にぶつかったと感じた場合、株式会社システムコンシェルジュが仕組み作りを支援する適切なツールを紹介することができます。
本記事に関するイノベーション・マネジメントシステムにご興味がある方はお気軽に相談ください。
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