ISO56001のリリースが間近に迫る:イノベーション・マネジメントシステムが日本企業にもたらすこと
2024年9月、ついにISO56001がリリースされる予定です。ISO56001は、イノベーション・マネジメントシステム(IMS)に関する新しい国際標準であり、企業が持続可能な成長を実現するための強力なフレームワークを提供します。この規格は、特に持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みを支援し、「8.働きがいも経済成長も」や「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」などの目標に焦点を当てています。
ISO56001(マネジメント規格)のリリース状況を知る方法
ISO56001のリリース状況は、以下のURLより確認でき、加えて持続可能な開発目標(SDGs)に対応する規格として明言されています。
ISO56001(マネジメント規格)とは
ISO56001(イノベーション・マネジメントシステム:マネジメント規格)は、ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム:ガイダンス規格)を基に策定された規格で、企業や組織がイノベーションを効果的に管理・推進するための枠組みを提供します。
ISO56002は、イノベーション・マネジメントシステムのガイドラインを提供しており、ISO56001はこれを基にした具体的な要求事項を含んでいます。
この規格は、イノベーション活動を体系的に管理し、組織全体でイノベーション文化を醸成することを目的としています。具体的には、ビジョン設定、戦略策定、リソースの最適化、リスク管理、成果の評価といったプロセスを通じて、企業が競争力を維持し、成長するための基盤を構築します。
ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム:ガイダンス規格)の要求事項
ISO56002は、2019年に制定されたイノベーション・マネジメントシステムの効果的な運用を支援するためのガイドラインです。すでに2023年9月にJIS Q 56002:2023 イノベーション・マネジメント―イノベーション・マネジメントシステム―手引きとしてリリースもされています。
その主な要求事項は以下の通りです。
| 項目 | 要求事項 |
| イノベーションのビジョンと戦略 |
組織のビジョンと戦略に基づいてイノベーション活動を計画・実施することが求められます。これにより、組織全体で統一された方向性を持ってイノベーションを推進することが可能となります。 |
| リーダーシップとコミットメント |
経営層が積極的にイノベーションを支援し、リーダーシップを発揮することが求められます。リーダーシップは、組織の全レベルにおいてイノベーション文化を醸成し、従業員が新しいアイデアを提案できる環境を作り出すために不可欠です。 |
| 組織の役割、責任、権限の明確化 |
イノベーション活動において、各メンバーの役割や責任、権限を明確にすることが必要です。これにより、組織内の連携が強化され、イノベーション活動が円滑に進められます。 |
| イノベーションのプロセス管理 |
イノベーション活動を体系的に管理するためのプロセスを設計・運用することが重要です。これには、アイデアの創出から実行、評価までの全プロセスを含み、継続的な改善が求められます。 |
| リスクと機会の管理 |
イノベーションにはリスクが伴いますが、それを効果的に管理することで、成功の可能性を高めることができます。また、機会を積極的に探求し、それを活かすための戦略を策定することも重要です。 |
| パートナーシップとリソース管理 |
イノベーションの成功には、社内外のリソースを効果的に活用することが不可欠です。これには、外部パートナーとの連携や、必要な資源の確保・最適化が含まれます。 |
| パフォーマンスの評価と改善 |
イノベーション活動の成果を評価し、その結果を基に改善を行うことが求められます。これにより、組織は常に高いパフォーマンスを維持し、成長を続けることができます。 |
ISO56001、ISO56002を取得するメリット
ISO56001、またはISO56002を取得することには、以下のような多くのメリットがあります。
- 競争力の強化:ISO56001、ISO56002は、企業が市場での競争力を強化し、持続可能な成長を実現するためのイノベーション戦略を提供します。新たな製品やサービスの開発を促進し、企業が市場での優位性を確立するための重要な要素となります。
- 組織文化の変革:ISO56001、ISO56002を導入することで、組織内にイノベーション文化が根付き、従業員が積極的に新しいアイデアを提案し、それが実現される環境が整います。これにより、従業員のエンゲージメントが向上し、組織全体の生産性が高まります。
- リスク管理の強化:イノベーションにはリスクが伴いますが、ISO56001、ISO56002はそのリスクを効果的に管理するための手法を提供します。これにより、リスクを最小限に抑えつつ、イノベーションの成功確率を高めることができます。
- 外部との連携強化:ISO56001、ISO56002は、オープンイノベーションを推進するために、外部パートナーとの協力関係を強化します。これにより、企業は社内外のリソースを活用し、イノベーションを加速させることができます。
- SDGsへの貢献:ISO56001、ISO56002は、SDGsの達成に向けた企業の取り組みを支援します。これにより、企業は社会的責任を果たしながら、持続可能な成長を目指すことができます。
ISO56001、ISO56002の取得方法
現時点では、ISO56001、ISO56002は、公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)などの適合性評価を行う認証機関が決定しておらず、審査機関のプライベート認証となっています。ただし、この認証の注目度や重要性などから早い段階で認証機関が決定され、多くの日本企業が認証取得するものと考えられます。
ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)の認証審査の実績にある審査会社は、現時点(2024年8月時点)では、BSI Japanのみとなっています。
| 参考記事 | ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)の認証を取得した企業 |
日本政府の統合イノベーション戦略2024との関連
日本政府は、統合イノベーション戦略2024の中でISO56001の重要性を強調しています。この戦略は、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」の一環として策定され、日本の経済成長を支える重要技術の推進や、グローバルな視点での連携強化を目指しています。とくに、AI分野の競争力強化や安全・安心の確保に向けた取り組みが強化される中で、ISO56001はイノベーション・エコシステムの形成に重要な役割を果たすとされています。
さらに、一般社団法人電子情報技術産業協会(JIETA)も、ISO56001を日本工業規格(JIS)として検討する計画を進めており、この規格が国内で広く受け入れられることが期待されています。
まとめ
ISO56001のリリースは、日本企業にとって大きなチャンスです。この新しい規格を導入することで、企業は持続可能な成長を実現し、競争力を強化することができます。また、統合イノベーション戦略2024との連携により、日本のイノベーション力がさらに強化され、国際的な競争においても優位性を確保することができるでしょう。ISO56001を取得して、未来に向けた持続可能なイノベーションを推進していきましょう。
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