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イノベーションにおける確証バイアスへの対策

  • 著者 : INNOVATION WORLD 編集部
  • 23.08.11
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確証バイアスがもたらす弊害について

確証バイアス(confirmation bias)とは、自分の既存の信念や意見を確認・強化する情報を優先的に受け入れ、それに反する情報を無視する傾向のことを指します。このバイアスがビジネスの失敗に結びつく理由を以下に示します。

  1. 意思決定の質の低下
    確証バイアスにより、経営者やリーダーが狭い視野で情報を収集・分析するため、ビジネスの意思決定が偏ったものになりやすい。この視野については、以下の記事でも解説しています。
    経営と現場に乖離を取り除くイノベーション組織

  2. 市場の変動への対応の遅れ
    自分の信念を確認する情報のみを重視すると、市場の変動や新しいトレンドを見逃しやすくなります。たとえば市場や顧客の変化は最前線で働く従業員が最も敏感に察知しますが、確証バイアスによって、その情報を見逃してしまい顧客ニーズとサービス内容が合わなくなりビジネスが衰退する可能性が高くなります。

  3. イノベーションの阻害
    確証バイアスがあると、新しいアイデアや異なる視点を受け入れることが難しくなり、この症状が進行すると新しいアイデアや改善提案しても無意味という意識が浸透してしまい、自ら考えることをせずに指示待ちな従業員が増え、イノベーションの機会を逃すことにもつながります。

  4. チーム内のコミュニケーションの低下
    確証バイアスが強い人は、自分の意見と異なる意見に対して敵対的になりやすい。もしくは意見を聞いたように振る舞うが、結果として意見を取り入れいないという状態は、チーム内のコミュニケーションや協力の妨げとなる。

  5. リスク評価の誤り
    経営者や上級管理職が確証バイアスの影響を受けていたり、経営者や上級管理職が自らの確証バイアスによって従業員や顧客の意見を聞かずにビジネス推進をしてしまうと企業が直面するリスクを適切に評価できなくなることがあります。

  6. 学習の障壁
    失敗から学び、成長するためには、失敗の原因を正確に分析し、必要な改善策を考えることが必要です。しかし、確証バイアスが存在すると、失敗の原因を客観的に評価することが難しくなります。

このように、確証バイアスは多方面でビジネスの効率や成功を妨げる可能性があるため、意識的にこのバイアスに対処し、多角的な視点で情報を収集・分析することが重要です。

確証バイアスに対処し、ビジネスリスクを軽減させるには

確証バイアスに対処するには、いくつかの方法がありますが、本記事ではISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)のガイドラインを参考にした対処方法を解説します。まずはISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)をわかりやすい図で表現した一般社団法人 Japan Innovation Network(JIN)が作成するIMSコンパスを参照してください。
このプロセスでは、機会を見つけ、それをアイデアに落とし込み、そのアイデアをコンセプトに変え、具体的な解決策(ソリューション)に昇華させ、それを実際に導入して価値を生み出します。

図.1 IMSコンパス/出典:一般社団法人 Japan Innovation Network(JIN)

ビジネスの「シフトレフト」で早期にリスクを回避

似たような考え方は、SAFe(Scaled Agile Framework:スケールド・アジャイル・フレームワーク)などにも示されています。私たちはイノベーション・マネジメントシステム(IMS)にもアジャイル的な方法論は取り入れるべきだと考えています。

その理由のひとつは、「シフトレフト」の考え方です。これはソフトウェア開発の領域で言われていることで、バグや不具合はできるだけ早い段階で見つけて対処するほうが、後から問題が発生したときにかかるコストを抑えることができるという考え方です。

「シフトレフト」の考え方はイノベーション・マネジメントプロセスにも当てはまります。ソフトウェア開発では早期に問題を見つけるためのツールや手法が確立されている一方で、ビジネスや経営の側面では確立はされておりません。

だからこそ、いま考えているビジネスプランが後々になって大きな損失を生むことにならないように、事前に問題を発見し対応するための仕組みが必要があるのです。

確証バイアスを制御する方法とは

前述のような状態に陥ることを防止し、どのようにしてイノベーションを公平で公正なシステムとして運用できるのでしょうか。以下にいくつかの方法を説明します。

1)外部サービスを利用する

市場調査会社のサービスでは、調査レポートを確認できたり、調査アナリストから直接アドバイスをしてもらうなど、自らのアイデアやコンセプトを事前に検証することができます。

例えば、IT業界やテクノロジー分野であれば、ガートナージャパン株式会社が提供するリサーチ&アドバイザリというサービスも有益な方法です。アイデアやコンセプト段階で検証でき、早期に問題を発見できると考えれば費用対効果はあるものと考えられます。

自動車業界や金融・保険業界など、その業界に特化した市場調査サービスを利用することで第三者視点の専門家の意見を取り入れてみましょう。

2)コンセプトの創造と検証は別々の人が担当する

「確証バイアス」によって自分自身が提案したアイデアやコンセプトを肯定した情報を選び取ってしまうケースも考えなければなりません。だからこそ、アイデアやコンセプトを提案した人と、それを検証・評価する人は違う方が良い場合があります。

ソフトウェア開発の現場でも、コードを書く開発エンジニアと、そのコードの品質をチェックするテストエンジニアは別々の人が担当します。これと同じように、新しいアイデアを考える人と、そのアイデアの有効性を検証・評価する人を別々にすることで、確証バイアスを防ぐことが可能です。

また、必要であればアイデアの評価を行う人には、そのアイデアが誰のものかを伏せることも大切です。なぜなら、アイデアやコンセプトの検証を行う評価者自身の認知バイアスも問題となる場合があるからです。例えば、「あの人が考えたんだから、きっと大丈夫だろう」や「社長が考えたことなら、まずは実行しよう」「とりあえずやってみてから考えよう」といった思考が入り込むと、適切な評価が難しくなります。

評価者には、「検証は否定や批判ではなく、アイデアを成功させるために何が足りないかを見つけ出す作業である」という理解も必要となります。

3)ルールやガイドラインを作成し遵守する

「まず行動して、問題が出たらそのとき考えよう」「とりあえずやってみよう」と考える経営者や上級管理職もいらっしゃると思いますが、その後の起こり得るビジネスや組織、従業員への悪影響を考れば、あらかじめ定義されたルールやガイドラインによって必要最低限の検証・評価を行うことを強くおすすめします。

そのためにはアイデアやコンセプトを創造するときは、ビジネスモデルキャンパス(BMC)などのフレームワークを活用し、ビジネスプランに必要な基本情報をまとめることが重要です。

そして十分な情報がない状態でコンセプトの検証段階に進んでしまった場合、コンセプトの創造段階に差し戻しすることも行う必要があります。

これは経営者や上級管理者であっても例外なく、遵守すべき事項として考えてください。


まとめ

経営体制やビジネスの推進方法に「イノベーション・マネジメントシステム」を取り入れることで、自分たちの考えに偏りが生まれてしまう「確証バイアス」を抑え、問題を早く見つけて、リスクを避けることができます。これにより、問題にすばやく対応できるようになります。

すでに経営陣や上級管理職などがビジネスが考えるという時代から、会社全体の経営システムとして考えるという時代へ移りつつあるのです。

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