イノベーションを体系的に推進するためには、人材育成と組織開発が必要不可欠ですが、これらをどのように進めていけばいいのかについて明確なイメージを持つことが難しいと感じている方も多いでしょう。
イノベーションの体系化に際しては、ISO 56002(イノベーション・マネジメントシステム)の国際標準規格を参考にすることが推奨されます。しかし、この標準規格に沿って行動を起こすことは、時間やコスト、人的資源を多く要求されるため、実践が難しいと感じる方もいるかもしれません。
それほど難しく考える必要はありません。ISO 56002の基本的な理解を深め、小規模から始めるだけで、組織は大きく変わる可能性があります。従業員数や業界に関係なく、このアプローチはビジネス組織の活性化を促し、新たな価値の創出や既存価値の向上に貢献します。
本記事では、イノベーションを実現するための出発点として、人材育成と組織開発に適したアプローチをご紹介します。
イノベーション人材の育成
イノベーション人材に関する記事は、過去にもいくつか公開させていただきました。
国内初のISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)の認証取得を行なった株式会社システムコンシェルジュの役割と育成カリキュラムの情報を整理した人材育成カリキュラムをご紹介します。
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担当 |
役割 |
育成カリキュラム |
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イノベーション推進責任者 |
ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)の規格要求事項を把握し、組織のIMSに関する責任を追う。 |
IMSAP研修 |
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イノベーション推進リーダー |
ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)の規格要求事項を把握し、組織のイノベーション推進メンバーに適切な推進を行う。 |
IMSAP研修 デザイン思考研修 |
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イノベーション・アンバサダー |
イノベーション推進部門の協力者もしくはメンバーとして、ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)の規格要求事項を把握し、各部門やチームの中継役(ハブ)となって、イノベーションを推進する活動を行う。 |
インバスケット研修 社内研修(※.1) |
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従業員 |
組織のIMSのビジョン、戦略、方針を把握し、規則・規定を順守しつつ、情報への気づき、発見、洞察を行い、イノベーション推進部門に外部および内部の情報インプットまたは改善要望を行う。 |
インバスケット研修 デザイン思考研修 |
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イノベーション内部監査員 |
ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)の規格要求事項を把握し、組織のIMSに関する内部監査を行う |
IMSAP研修 |
※.1 社内研修は、株式会社システムコンシェルジュの従業員へ行う社内研修となり、現段階では外部へのサービス提供は行なっておりません。
イノベーション組織の開発・構築
人材育成カリキュラムは、あくまで個人のスキルや知識などの力量を向上させる目的となります。イノベーションは個人によって引き起こされるものではありません。これまで多くのビジネス組織のイノベーションに対して成果を感じない、期待通りではないと感じる原因のひとつは、研修によって知識を得て、個人の力量を高めれば、イノベーションが起こるものと思ってしまったことです。
イノベーションは個人だけで行うものではない
イノベーションは個人で起こすものではなく、複数人で構成されたチームで引き起こすものです。発想力や創造力に優れた人が、製品・商品開発、ビジネスモデル化、その後の営業、マーケティングなどのビジネスプロセスまで、すべてを行うことは困難です。必ず協力者は必要となります。
過去の記事:イノベーションを導くリーダーシップ ~5大力量と人材育成~| イノベーションワールドでも説明をしましたが、さまざまな思考特性をもつメンバーを把握し、チームビルディングを行う仕組みやマネジメント能力が必要になります。
トップやマネジメントの強い意志とコミットメント
イノベーターを支援し、イノベーション活動に必要な人材を確保し、適切なチームを組成することは、ビジネスの持続的成長を促す投資活動の一環です。そのため、いかなる状況下でも継続的に取り組むことの重要性を強調し、強い決意とコミットメントが求められます。
過去の記事:売上低迷、景気後退時でもイノベーションを継続する| イノベーションワールドでも解説しましたが、イノベーション活動は、現行のビジネスと同じくらい、あるいはそれ以上の価値を持つ重要な取り組みです。そのため、「忙しくて手が回らなかった」「時間がなかった」といった理由で優先度を下げてしまうことは、将来的にビジネスに危機を招く原因となり得ます。
経営陣やマネジメント層は、イノベーション活動のための人材と時間を保障するなど、支援策を講じる必要があります。
イノベーションには、両方が必要
人材育成だけに注力し、イノベーション活動は個人に委ねる。組織や役割だけ作り、力量が足りなかったり、人的リソースが足りなかったりして貴重な人員が疲弊してしまい、当然ながら成果がでなかったりする場合も少なくありません。
イノベーションを起こす組織作りには、人材育成と組織開発の両方を同時に行うことが大切です。これらを効果的に進めるために一部だけ仕組み化やITツールが必要になる場合もありますが、その本質は人材育成と組織開発となります。
事例では、大手商社の関連会社にて、イノベーション人材の育成と仕組み化を、イノベーション管理ツール『IDEASCALE』によって実現した事例があります。
これらの事例を踏まえて、イノベーション組織作りのスタート時に行うべき具体的な内容を紹介します。
行うべき具体的な内容
イノベーション組織作りのスタート時に行うべき具体的な内容として、イノベーション管理ツール『IDEASCALE』を活用する導入企業が実践している取り組みを紹介します。
- コミュニティ作り(チーム編成)
解決すべきテーマや追求したい価値を明確に定め、これらを組織全体に告知し、同じ問題意識や課題感を共有するメンバーでコミュニティを構築します。共通の意識を持つメンバーにより、活動が個人のものではなく、組織全体の取り組みとして認識されるようになります。これにより、イノベーターは保護されるだけでなく、メンバー間で共有される知識や経験を結集することで、イノベーション活動をより迅速に推進することが可能になります。
このようなコミュニティの構築には、イノベーション管理ツール「IDEASCALE」のキャンペーン機能を活用することが効果的です。特定のテーマを設定し、参加メンバーを募集し、具体的な検討と実行のプロセスを定めることで、活動の可視化が可能になります。これにより、参加メンバーのモチベーションが高まり、従業員のエンゲージメントも向上します。
- イノベーションへの意識を高める組織的なキッカケ作り
コミュニティの形成が難航している場合、イノベーション意識を高めるためのキッカケを作る必要があることが明らかです。海外の事例を見ても、単にツールを導入し、その操作方法をレクチャーするだけでは成果を上げることは難しいとされています。したがって、イノベーションを組織文化の一部として根付かせるためには、キッカケを作ることが重要な要素の一つとなります。
キッカケ作りのアプローチには複数の方法があります。例えば、
- 経営陣やマネジメント層によるイノベーションへの強い決意の公表や、評価制度の導入
- 社内外でのビジネスコンテストやアイデアソンなどのイベントの開催
- ISO 56002の取得を目指す取り組みの推進
- イノベーション専門の組織の設立や、その役割の明確化、活動の促進と奨励
これらが主な例です。ただし、これらのキッカケ作りを実施しただけでは、イノベーション活動が組織に根付くことはありません。キッカケはあくまでスタートポイントであり、その先の持続的な取り組みが不可欠であることを忘れてはなりません。
イノベーション管理ツール『IDEASCALE』では、ビジネスコンテストや研究開発コンテスト(R&Dコンテスト)の内容を評価アセスメントして予算を割り当てする機能や、アイデアソンによって登録されたアイデアを評価選定してビジネスプランに育て上げる機能など提供されているため、コンテストだけで終わらすことはなく、その後の知財として蓄積してリサイクルをするなど将来への財産として活用を促します。
- イノベーションの仕組み化と適切な運用(イノベーション機能の常駐)
ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)を引用したスモールスタートの仕組みをイノベーション管理ツール「IDEASCALE」、プロジェクト管理ツール「ONES Project」およびナレッジ管理ツール「ONES Wiki」によって最短3ヶ月で仕組み化をした事例があります。
通常であれば数年間かかるイノベーションの仕組みを最短3ヶ月でスモールスタートできる仕組み化が実現できるのであれば、大いに価値があると考えられます。当然ながら、ITツール導入によるインフラを整備しただけではイノベーションを起こすことはできず、前述のキッカケ作りやコミュニティ作りも行うことが大切です。
期待される成果
イノベーションの人材育成と組織開発に取り組むことは、日本社会が直面する多様な課題の解決に貢献します。新たな価値を生み出すことがイノベーション活動の核心であり、この過程には人的資源の活用が不可欠です。労働人口の減少に直面し、人材の流出を防ぎ、離職率を低下させ、従業員のエンゲージメントを高めようとする多くの企業にとって、イノベーションの体制を築き、人材を育成し組織を発展させることは、これらの課題を克服するための有効な手段と期待されています。
従業員規模や業種に関係なく、イノベーションの仕組み構築、人材育成と組織開発に早急に取り組むことが、現在のビジネス組織が抱える課題や近い将来起こりうる課題を解決するための備えとなります。