目次
- 2035年に向けて、なぜ経営手法の転換が必要なのか
- 旧来型経営は「成長する市場」を前提にしていた
- 人口減少は「人事課題」ではなく「経営モデルの課題」
- ゆっくり進む変化ほど、経営は気づきにくい
- 「人を増やす経営」から「価値を生み出す仕組みの経営」へ
- 重要なのは、『会議で判断すること』ではなく『判断基準を持つこと』
- 仕組み化とは、ツール導入でも部門設置でもない
- イノベーションは「新規事業」ではなく、経営の基本機能になる
- 経営手法を変えられない最大の理由は、経営自身が変わる必要があるから
- 2035年に向けた経営の転換点
- 経営に必要なのは「危機感」ではなく「構造認識」
- 経営手法を変える企業だけが、2035年を成長機会にできる
2035年に向けて、なぜ経営手法の転換が必要なのか
日本企業はいま、大きな転換点に立っています。
- 売上が伸びない
- 採用が難しい
- 若手が定着しない
- 管理職が育たない
- 新規事業が進まない
- DXが成果につながらない
- スタートアップ企業でも、成長戦略の実現に苦戦している
多くの企業で起きているこれらの現象は、一見すると個別の経営課題に見えます。しかし本質的には、もっと大きな構造変化の表れです。
それは、これまでの経営手法が、時代の前提と合わなくなっているということです。
日本企業の多くは、長い間
- 人を増やせば事業が回る
- 現場が頑張れば何とかなる
- 経験豊富な役職者が判断すれば大きく外れない
- 部門ごとに目標を持てば組織は動く
- 技術があれば良い製品が作れる
- 良い製品を販売すれば成功する
という前提の上に経営を築いてきました。高度経済成長期からバブル期までは、この考え方にも一定の合理性がありました。市場が拡大し、人口が増え、消費が伸び、企業が大きくなることそのものが成長と直結していたからです。
しかし、現在の日本はそのような時代ではありません。内閣府は、2024年度の名目GDPが年度として初めて600兆円を超えた一方で、個人消費は力強さを欠き、コストカット型経済から脱却して成長型経済へ移行できるかが重要な局面にあるとしています。つまり、日本経済は回復の兆しを見せながらも、従来の延長線上では持続的な成長を描きにくい段階に入っています。(内閣府ホームページ)
さらに、2035年に向けて最も深刻なのは労働力制約です。パーソル総合研究所と中央大学の推計では、2035年には1日あたり1,775万時間、働き手に換算して384万人分の労働力が不足するとされています。これは単なる採用難ではありません。社会全体として、これまでと同じ量の労働を前提に企業活動を設計することが難しくなるということです。(パーソル総合研究所)
この現実を前にして、企業は二つの道に分かれます。
一つは、従来のやり方を維持したまま、人手不足を外国人材、高齢者雇用、再雇用、外注、非正規雇用で埋めようとする道です。もう一つは、人が少なくても価値を生み出せるように、業務、組織、意思決定、評価制度、価値創造プロセスそのものを作り替える道です。
継続的な成長を達成できる組織は、明らかに後者です。
旧来型経営は「成長する市場」を前提にしていた
1980年代までの日本企業は、成長する市場を前提に経営を組み立ててきました。人口が増え、国内需要が拡大し、製造業を中心に国際競争力も高まりました。この時代の経営手法は、終身雇用、年功序列、企業内教育、現場改善、品質管理、長期取引、合意形成型の意思決定といった、いわゆる日本的経営でした。
この経営手法は、決して間違っていたわけではありません。むしろ、当時の環境には非常に適合していました。人を長期的に抱え、企業内で育成し、現場で改善を積み重ね、品質を高め、大量に生産し、安定的に供給する。成長市場においては、この仕組みが強い競争力を持っていました。
しかし、その強みは同時に弱みにもなりました。なぜなら、この経営手法は「市場が伸びる」「人が採れる」「現場に余力がある」「過去の経験が将来にも通用する」という前提に依存していたからです。
バブル崩壊後、この前提は崩れ始めました。1990年代以降、日本企業は成長よりも防衛を優先するようになります。リストラ、コスト削減、事業撤退、固定費削減、成果主義、BPRなどが広がりました。経営は、価値を創り出すことよりも、損失を止めることに傾きました。
2000年代には、IT化、ERP、SCM、内部統制、コンプライアンス、アウトソーシングが進みました。業務の標準化や可視化は進みましたが、多くの企業では、それが必ずしも新しい価値創造につながったわけではありません。システムを入れること、制度を整えること、規程を作ることが目的化し、経営手法そのものの刷新には至らなかった企業も少なくありませんでした。
2020年代には、DX、働き方改革、ダイバーシティ、オープンイノベーション、アジャイル、デザイン思考などが広がりました。しかし、ここでも同じ問題が起きました。ツールを入れた、部門を作った、アイデアを集めた、研修を行った。けれども、経営の判断基準、組織構造、評価制度、価値創出プロセスが変わらなければ、成果は限定的です。
日本企業は長い間、手法や制度を追加してきましたが、経営の前提そのものを十分に問い直してこなかったのです。
そして変化に対応するために、既存の仕組みの変更ではなく、既存の仕組みに上乗せすることばかり続けるのであれば、人手が足りなくなるのは当然のことです。すでに経営に関する構造的な課題は待ったなしの状態といえます。
人口減少は「人事課題」ではなく「経営モデルの課題」
多くの企業では、人手不足を人事部門の課題として扱います。
- 採用を強化する
- 求人媒体を増やす
- 外国人材を採用する
- 定年を延長する
- 高齢者を再雇用する
- 賃金を上げる
- 福利厚生を充実させる
これらはもちろん必要な施策です。
しかし、それだけでは不十分です。なぜなら、2035年に向けた労働力不足は、単なる採用競争の問題ではなく、企業の経営モデルそのものを揺さぶる問題だからです。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口では、15〜64歳の生産年齢人口は1995年の8,726万人をピークに減少局面に入り、2020年には7,509万人となっています。また、出生中位推計では2032年に7,000万人を下回るとされています。(IPSS)
これは、企業が「足りない人を採ればよい」と考え続けることの限界を示しています。全体として働く人が減っていく社会では、自社だけが従来どおり人材を確保し続けることは難しくなります。特に地方、中小企業、専門人材を必要とする業種では、採用力の差がそのまま事業継続力の差になります。
それにもかかわらず、多くの企業は人手不足を「人員補充」で解こうとします。ここに大きな落とし穴があります。
本来問うべきは、「なぜこれほど多くの人手が必要な業務構造のままなのか」です。
- なぜ承認が多いのか
- なぜ会議が多いのか
- なぜ部門間の調整に時間がかかるのか
- なぜ同じ情報を何度も入力しているのか
- なぜベテランがいないと業務が回らないのか
- なぜ新しい人が入ってもすぐに戦力化できないのか
- なぜ管理職がプレイングマネージャーとして疲弊しているのか
これらは採用の問題ではありません。業務設計、組織構造、意思決定、ナレッジ管理、評価制度の問題です。
したがって、2035年に向けた経営では、人手不足を「人事課題」としてではなく、「経営手法を変えるべきサイン」として捉える必要があります。
ゆっくり進む変化ほど、経営は気づきにくい
深刻な問題は、人口減少や価値観の変化が一気に起こるものではないということです。地震や災害、事故、不祥事のような急激な変化であれば、経営はすぐに反応します。しかし、人口構造の変化、労働観の変化、顧客価値の変化、技術変化は、ゆっくりと進みます。
- 採用応募が少しずつ減る
- 若手の離職が少しずつ増える
- 顧客の反応が少しずつ鈍る
- 既存商品の成長率が少しずつ低下する
- 会議が少しずつ増える
- 管理職の負荷が少しずつ高まる
- 新規事業の検討期間が少しずつ長くなる
単年で見れば、どれも「一時的な問題」に見えます。しかし、10年単位で見れば、明らかな構造変化です。
経営者がこの変化に気づけない理由は、能力が低いからとは限りません。多くの場合、経営の仕組みが、ゆっくりした変化を検知するように設計されていないのです。
経営会議で見ている指標が、売上、利益、受注、粗利、稼働率、予算達成率に偏っていると、変化は結果として表面化するまで見えません。
- 売上が落ちたときには、すでに顧客価値が変わっているかもしれません
- 利益が悪化したときには、すでに業務構造が限界を迎えているかもしれません
- 採用できなくなったときには、すでに会社の魅力や働き方が市場と合わなくなっているかもしれません
これからの経営に必要なのは、財務指標だけではありません。経営の先行指標です。
採用充足期間、内定承諾率、若手離職率、中堅社員の退職理由、管理職候補者数、属人業務数、承認階層数、部門横断案件の停滞期間、顧客課題の変化、提案採用率、改善提案の実行率、新規事業の検証件数、撤退判断の件数。こうした指標を見なければ、ゆっくり進む変化には気づけません。
経営には、変化を観測する能力が必要です。より正確に言えば、経営者個人の勘に頼るのではなく、組織として変化に気づける仕組みが必要です。
「人を増やす経営」から「価値を生み出す仕組みの経営」へ
2035年に向けて、企業が最も大きく変えなければならないのは、人に対する見方です。
旧来型経営では、人材はしばしば「業務をこなす労働力」として扱われてきました。人が足りなければ採る。忙しければ残業する。経験者が抜ければ代わりを探す。現場が回らなければ外注する。この発想では、人材は業務量を埋める存在になります。
しかし、これからの時代に必要なのは、人的資本経営です。経済産業省は、持続的な企業価値向上に向けて、経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するかを議論し、「人材版伊藤レポート2.0」を公表しています。ここで重要なのは、人材を単なる労働力ではなく、企業価値を生み出す資本として捉えることです。(経済産業省)
人的資本経営とは、研修制度を増やすことではありません。採用広報を強化することでもありません。経営戦略を実現するために、どのような人材能力が必要かを明確にし、現在の組織能力との差分を把握し、採用、育成、配置、評価、外部連携、AI活用を一体で設計することです。
ここでも重要なのは、基準点です。
- どの事業を伸ばすのか
- どの価値を顧客に提供するのか
- そのためにどんな能力が必要なのか
- 現在の人材ポートフォリオはそれに合っているのか
- 管理職は変革を担える状態にあるのか
- 評価制度は挑戦を促しているのか
- 既存業務に人材を固定しすぎていないか
この問いがないまま採用や教育を強化しても、人的資本経営にはなりません。旧来の業務構造に人を補充しているだけです。
2035年に向けた経営では、「人を何人確保できるか」ではなく、「限られた人材でどれだけ高い価値を生み出せる組織になっているか」が問われます。
重要なのは、『会議で判断すること』ではなく『判断基準を持つこと』
日本企業では、重要なことは会議で決めるという文化が根強くあります。経営会議で判断する、営業会議で判断する、役員会で判断する。もちろん、会議体そのものは必要です。組織として意思決定するための場は不可欠です。
しかし、会議で判断することと、判断基準を持つことは違います。
会議で「どう思うか」を議論しているだけでは、判断は参加者の経験、役職、声の大きさ、過去の成功体験、その場の空気に左右されます。特に変化の激しい時代には、過去の経験だけに依存した判断は危険です。
本来、会議で議論すべきなのは、あらかじめ定めた基準点に対して、どのような変化が起きているのかです。
例えば、
- 投資判断であれば、期待する価値、検証すべき仮説、許容する損失、撤退基準、次の意思決定タイミングを明確にする
- 新規事業であれば、アイデアの面白さではなく、どの顧客課題を解くのか、どの価値を実現するのか、どの証拠が得られれば継続するのかを明確にする
- 人材戦略であれば、どの能力が将来不足するのか、どの部門に過剰な負荷があるのか、どの管理職層が変革のボトルネックになっているのかを見る
「社長が判断する」「役員会で決める」「部門長に任せる」というやり方は、基準ではありません。それは責任の所在を示しているだけです。
2035年に向けて必要なのは、個人や会議体に判断を委ねる経営ではなく、価値基準、投資基準、撤退基準、リスク基準、組織能力基準を持つ経営です。会議は、その基準点と現実との差分を確認し、次に何を変えるかを決める場でなければなりません。重要なのは「何を基準に決めるか」です。
仕組み化とは、ツール導入でも部門設置でもない
多くの企業が「仕組み化」という言葉を使います。しかし実際には、仕組み化が誤解されているケースが少なくありません。
- システムを導入したから仕組み化できた
- ワークフローを作ったから仕組み化できた
- 新規事業部門を作ったからイノベーションの仕組みができた
- アイデア募集制度を始めたからイノベーション活動が進む
- DX推進部を作ったからデジタル変革が進む
これらは、仕組み化の入口にはなります。しかし、それだけでは仕組み化とは言えません。
仕組み化とは、組織が再現性を持って成果を生み出せる状態を指します。そのためには、目的、基準、役割、権限、責任、プロセス、情報、評価、改善がつながっている必要があります。
例えば、
- 新規事業部門を作っても、経営戦略との接続がなければ孤立する
- アイデアを集めても、評価基準がなければ選別できない
- PoCを行っても、継続・中止・撤退の基準がなければ学習にならない
- DXツールを入れても、業務プロセスを変えなければ、単なるデジタル化にとどまる
仕組み化とは、手段を導入することではありません。成果が生まれる構造を設計することです。
2035年に向けて必要なのは、現場の努力に依存しない経営です。特定のベテランに聞かなければ分からない、特定の管理職が調整しなければ進まない、特定の役員が認めなければ動かない。このような属人的な経営は、労働力制約の時代には大きなリスクになります。
イノベーションは「新規事業」ではなく、経営の基本機能になる
2035年に向けて、もう一つ避けて通れないのがイノベーションです。
多くの企業では、イノベーションを新規事業、アイデア創出、研究開発、スタートアップ連携のように捉えています。もちろん、それらもイノベーションの一部です。しかし、人口減少と労働力制約が進む時代において、イノベーションを一部門の活動として閉じ込めたままでは、継続的な価値創出は難しくなります。
イノベーションとは、変化する環境の中で、新しい価値を生み出し続ける経営機能です。
- 既存事業の提供価値を見直す
- 業務プロセスを再設計する
- 人が少なくても回る仕組みを作る
- AIと人間の役割分担を変える
- 顧客との関係性を変える
- 収益モデルを変える
- サプライチェーンを再構築する
- 失敗を学習資産に変える
これらはすべて、広い意味でのイノベーションです。
ISO 56001は、組織がイノベーション・マネジメントシステムを確立し、実施するための共通言語と枠組みを提供するものとされています。重要なのは、イノベーションを個人のひらめきや偶然に依存させるのではなく、組織として継続的に価値を創出するマネジメントシステムとして捉える点です。(ISO)
これは、2035年に向けた経営に極めて重要な考え方です。
なぜなら、これからの経営では、変化に気づき、機会とリスクを捉え、経営の意図・方針・戦略・目標と接続し、資源を配分し、実験し、評価し、改善する仕組みが不可欠になるからです。
- アイデアを出すだけでは不十分
- 部門を作るだけでは不十分
- チャレンジを奨励するだけでも不十分
必要なのは、価値を定義し、判断基準を持ち、組織として学習し、継続的に変化できる仕組みです。
経営手法を変えられない最大の理由は、経営自身が変わる必要があるから
では、なぜ多くの企業は、ここまで明らかな変化があるにもかかわらず、経営手法を変えられないのでしょうか。
理由は単純です。経営手法を変えることは、経営者や役職者自身のあり方を変えることだからです。
- 人手不足を採用で解決するだけなら、人事部門の仕事にすればよい
- 業務効率化をシステム導入で解決するだけなら、情報システム部門の仕事にすればよい
- 新規事業をアイデア募集で解決するだけなら、企画部門の仕事にすればよい
- 若手の定着を研修で解決するだけなら、教育担当の仕事にすればよい
仕組みづくり、組織構造改革、イノベーション・マネジメントに踏み込むと、経営そのものが問われます。
- 経営の意図は明確か
- 戦略は現場に伝わっているか
- 価値基準はあるか
- 部門ごとの評価指標が全社価値を阻害していないか
- 管理職の役割は時代に合っているか
- 権限と責任は明確か
- 会議体は判断基準を持っているか
- 失敗から学習する仕組みはあるか
- 撤退基準はあるか
- 人材を既存業務に固定しすぎていないか
この問いに向き合うことは、簡単ではありません。なぜなら、それは現場に変化を求めるだけでなく、経営者と役職者にも変化を求めるからです。
旧来型経営では、役職者が経験で判断し、部門が自分の範囲を守り、会議で調整し、現場が実行するという構造が成立していました。しかし、これからの時代には、その構造そのものが変化への抵抗要因になる可能性があります。
経営手法を変えるとは、単に新しい言葉を取り入れることではありません。権限、責任、判断基準、評価制度、情報の流れ、組織の分け方まで変える必要があります。だからこそ難しいのです。
2035年に向けた経営の転換点
これからの企業に必要な経営手法は、次のように整理できます。
| これまでの経営手法 | これからの経営手法 | 変える理由 | 必要な取り組み |
| 労働力依存型経営 | 価値創出型経営 | 人を増やして業務量を処理するのではなく、価値を生まない業務を減らし、少人数でも成果が出る構造へ変える | 業務の棚卸し、不要業務の削減、標準化、自動化、AI活用、業務プロセスの再設計 |
| 部門最適経営 | 価値連鎖経営 | 各部門が個別KPIだけを追うのではなく、顧客価値と事業価値を基準に、組織横断で動く | 部門横断プロセスの設計、共通KPIの設定、顧客価値基準の明確化、情報共有の仕組み化 |
| 経験依存型経営 | 判断基準型経営 | 役職者の経験や会議の空気に頼るのではなく、明確な基準に基づいて判断する | 価値基準、投資基準、撤退基準、リスク基準、顧客価値基準の整備 |
| 人材管理 | 人的資本経営 | 人を労働力として管理するのではなく、経営戦略を実現する資本として捉え、人材能力と組織能力を設計する | 必要スキルの定義、人材ポートフォリオ設計、育成・配置・評価制度の見直し、組織能力の可視化 |
| 偶発的イノベーション | イノベーション・マネジメント | アイデアや個人の熱意に依存するのではなく、組織として機会を見つけ、実験・評価・学習し、価値へ変換する | 機会探索、仮説検証、実験プロセス、評価基準、学習サイクル、価値創出プロセスの仕組み化 |
この五つの転換は、個別施策ではなく、相互に関連しています。
- 人的資本経営がなければ、イノベーションは人材不足で止まる
- 判断基準がなければ、DXもAI活用も部分最適になる
- 組織構造が変わらなければ、部門横断の価値創出は進まない
- 仕組み化がなければ、変革は一部の人の努力で終わる
経営に必要なのは「危機感」ではなく「構造認識」
人口減少が危機であることは、多くの経営者が理解しています。採用が難しいことも、人材の価値観が変わっていることも、AIが普及していることも、多くの経営者は知っています。
しかし、知っていることと、経営手法を変えることは違います。
必要なのは危機感ではなく、構造認識です。
- 人口が減る
- 労働力が制約される
- 人の価値観が変わる
- 顧客の判断基準が変わる
- 技術が変わる
- その結果、これまでの業務、組織、評価制度、意思決定、管理職の役割が合わなくなる。
ここまでを一つの構造として捉えなければ、経営は変わりません。
危機感だけでは、「採用を強化しよう」「教育を増やそう」「DXを進めよう」「AIを使おう」という個別施策に流れます。構造認識があって初めて、「そもそも今の経営手法が時代に合っていないのではないか」という問いに到達できます。
2035年に向けて必要なのは、危機を煽る経営ではありません。変化を冷静に観測し、自社の前提との差分を見極め、仕組みを変え続ける経営です。
経営手法を変える企業だけが、2035年を成長機会にできる
2035年は、遠い未来ではありません。企業にとっては、中期経営計画を数回重ねれば到達する現実です。新卒で入社した社員が中堅になるころ、現在の若手管理職が経営幹部になるころ、現在の主力事業が成熟または衰退の局面を迎えるころです。
そのとき、企業は二極化しているはずです。
一方には、人手不足を採用で埋めようとし続け、現場の努力に依存し、会議で調整し、部門ごとの都合を優先し、過去の成功体験を引きずる企業があります。これらの企業は、労働力制約、価値観の変化、技術変化に対応できず、徐々に競争力を失っていく可能性があります。
もう一方には、人が少なくても価値を生み出せる仕組みを作り、経営の意図と判断基準を明確にし、組織横断で価値を設計し、人的資本を戦略と接続し、イノベーションを経営機能として組み込む企業があります。これらの企業は、2035年の制約を単なる危機ではなく、経営を進化させる機会として捉えることができます。
経営手法は、時代の前提に合わせて変える必要があるのです。
- 高度成長期の経営手法は、成長市場には適していた
- バブル崩壊後の守りの経営は、財務を立て直すには必要だった
- 2000年代の効率化と統制は、業務を標準化するうえで意味があった
- 2010年代のDXや働き方改革は、変革への入口になった
しかし、2035年に向けて必要なのは、それらの延長ではありません。
- 必要なのは、価値を基準に経営を再設計すること
- 人手不足を採用だけで解かず、業務構造を変えること
- 会議で判断するのではなく、判断基準を持つこと
- 人材を労働力ではなく、人的資本として捉えること
- イノベーションを特別活動ではなく、経営の基本機能にすること
- ゆっくりした変化に気づけるように、経営の感受性を仕組み化すること
2035年に向けて問われているのは、企業がどのようなツールを導入するかではなく、どのような経営手法に変わる覚悟があるかです。
変化はすでに始まっています。
問題は、その変化に気づくかどうかではありません。
気づいたあとに、経営そのものを変えられるかどうかです。
ISO56001(イノベーション・マネジメントシステム)は、その経営手法を実践できる道標になるでしょう。
ISO 56001の考え方に沿ったイノベーションの仕組み化は、システムコンシェルジュにご相談ください
ISO56001の認証取得に関わらず、イノベーションの仕組み化の導入をご検討中の企業さまは、まずはシステムコンシェルジュにご相談ください。貴社の状況に合わせてご案内いたします。
まずは相談してみる