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不確実性(VUCA)時代に必要なイノベーション・マネジメントシステム(ISO56002)とは

  • 著者 : INNOVATION WORLD 編集部
  • 23.08.18

不確実性(VUCA)の時代とは

不確実性(VUCA)とは、以下の4つの英語の頭文字からなる言葉です。

    1. Volatility(ボラティリティ) – 変動性:事態が急速に変わること、予測が困難であること。
    2. Uncertainty(アンサーティンティ) – 不確実性:未来の出来事や結果が不確かであること。
    3. Complexity(コンプレクシティ) – 複雑性:多くの因子が絡み合い、要因の相互作用が難解であること。
    4. Ambiguity(アンビギュイティ) – 曖昧性:事実や原因が明確でないこと、解釈が複数存在すること。

    不確実性(VUCA)の時代とは、現代のビジネス環境や社会全般が上記の特徴を持っており、予測困難で不安定な状況が続いていることを指す言葉です。この概念は、冷戦終結後の複雑かつ予測しにくい国際状況を表すために、アメリカの軍学校で使われるようになりました。しかし、今日ではビジネスや経済、技術の進化、政治の変動など、多くの分野での課題や状況を指して使用されています。

    VUCAの時代を生き抜くためには、柔軟な思考、迅速な意思決定、持続的な学習、そして多様性を受け入れることが求められます。多くの組織やリーダーは、VUCAの環境に適応し、成功を収めるための新しい戦略やアプローチを模索しています。

    不確実性に対抗するためのアプローチ

    VUCAの環境に適応し、成功を収めるためには、以下のような戦略やアプローチが考えられます。

    1. ビジョンの明確化
    経営もしくはビジネスにおける明確なビジョンや方向性を定義し、浸透させることが求められます。どんなに状況が変動しても、一貫したビジョンがあれば方向性を失わずに進むことができます。

    2. 情報の共有と連携の仕組み
    Uncertainty(不確実性)に対抗するため、組織内での情報共有や連携を強化することが重要です。情報共有や情報公開をせずに属人化した状態では不確実性に対抗することはできません。部門のサイロ化を排除し、オープンな情報共有とディスカッションこそが不確実性に対抗する鍵になります。

    3. 意思伝達などのプロセスの仕組み
    経営やマネージメントと現場との情報伝達を速やかに行い、明確な意思疎通によって不確実な事象が発生してもビジネスリスクを大幅に減少させることができます。極端な分業制や部門サイロ化は、これらを大きく阻害する要因にもなり得るためにルールやツールなどを活用した対策が必要になります。

    4. デザイン思考、リーン思考の導入
    デザイン思考やリーン思考は、それぞれ独自のアプローチを持つ方法論ですが、不確実性(VUCA)の環境において、多くの有益な効果をもたらすことができます。これらの方法論の共通点は、顧客中心のアプローチや迅速な実験や検証・評価、顧客や従業員からのフィードバックの取り込みといった「問題発見力」「問題改善力」「洞察力」などを向上させる効果があります。変化に気づけない、機会や脅威を発見できないということがないように経営陣も含めたすべての従業員への育成が必要です。

    5. リーダーシップのコミットメント
    不確実性(VUCA)時代の経営マネージメントでは、経営マネージメント側のコミットメントが必要不可欠になります。経営資源、人的リソースなどを明確にしてコミットすることが求められます。

    6. イノベーション・マネジメントシステム(IMS)の導入
    不確実性(VUCA)に対抗するためのガイドラインとしてISO56002(イノベーション・マネジメントシステム:IMS)が公開されています。数年前から経済産業省から「イノベーション創出のための経営体制整備」などが日本企業に求められています。前述の5つだけでなく不確実性(VUCA)に対抗するために必要な12の支援体制などが説明され、事業が継続的に成長するためのベストプラクティスが定められています。

    不確実性(VUCA)に対抗するISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)とは

    ISO 56002は、「イノベーション・マネジメントシステムのためのガイダンス」を提供する国際標準規格です。この規格は、組織が不確実性や複雑性といったVUCAの環境においてもイノベーションを推進し、持続的な成功を達成するためのマネジメントシステムを構築するためのフレームワークを提供します。

    ISO 56002の主な内容や特徴は以下となります。

    1. 組織の文脈の理解
      組織の内外の要因を考慮し、これらがイノベーションマネジメントシステムにどのように影響するかを理解することが重要です。
    2. リーダーシップとコミットメント
      組織のトップリーダーシップは、イノベーションの文化を醸成し、リソースの確保や関連するリスクの管理など、イノベーション活動をサポートする役割を果たします。
    3. イノベーションの方針と戦略
      明確な方針や戦略を定義し、これを基にイノベーション活動を計画・実行します。

    4. 人々と文化
      イノベーションを成功させるためには、組織内の人々の能力やスキル、さらには文化や価値観も重要です。これらの要素を育成・醸成する取り組みが求められます。
    5. イノベーションのプロセス
      アイディアの生成から実現までの一連のプロセスを設計・実施します。これには、アイディアの収集、評価、実装などの段階が含まれます。
    6. パフォーマンスの評価と改善
      イノベーション活動の結果やパフォーマンスを定期的に評価し、これをもとに継続的な改善や調整を行います。

    ISO 56002の導入によって不確実性(VUCA)のビジネス環境下でも、新しい機会の探求や迅速な適応が行われ、継続的な成長を行うことができます。この規格を経営やビジネスおよび組織に取り入れることで、不確実性(VUCA)の時代を生き抜くことにつながります。

    ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)の構成要素

    ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)の構成要素は、一般社団法人 Japan Innovation Network(JIN)のIMSコンパスとして、わかりやすく図に記載されています。

    IMSコンパス

    出典:一般社団法人 Japan Innovation Network(JIN)

    ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)を実現するためのツールとは

    以前に記事

    を参照ください。

    これらの記事には、イノベーション・マネジメントシステムの各構成要素に対して、どのようなツールが適合するのかを参考までにご紹介をさせていただいております。


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